帰りたい！運転代行2時間待ち　業者も客も困った　コロナ禍の忘年会 [蚤の市★]

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　新型コロナウイルスの感染拡大から3回目の冬を迎える中、運転代行業者を利用しにくい状況が各地で相次いでいる。「ウィズコロナ」が定着し、親しい人同士で忘年会を再開する動きが広がる一方、業者に電話してもつながらず、到着まで長時間待たなければいけない事例が頻発。業者を使えずに飲酒運転をしてしまう事態も生じている。

　「お伺いするのは1時間後になりそうです」「20分後の到着は厳しいです」

　12月初旬の平日夜、「AIS運転代行」の運営会社（福岡市城南区）に配車依頼の電話が相次いだ。新型コロナの行動規制がなくなったこともあり、今冬は忘年会を再開する人が増え、配車依頼は1年前の1・5倍に急増。数少ない代行業者を確実に押さえようと、事前予約する利用客も3倍近くに増えたという。

　同社はコロナ禍前、車両5台を稼働していたが、飲食店の休業や営業時間の短縮が続いた影響で売り上げが落ちたため、やむなく3台にまで減らしていた。

　社長の男性（56）は「週末は2時間半待ちもある。台数増で対応したいが、コロナが収束したわけではない。維持費、人件費を考えると増車のタイミングが難しい」と打ち明ける。

　運転手の人手不足も状況を悪化させている。代行運転をするには、タクシー運転手などに求められる第2種免許が必要だからだ。

　熊本市東区の「西日本運転代行」は約80人いた運転手のうち、コロナ禍による先行きへの不安などから約半数が退社。関直哉社長（44）は「業界の先行きが不透明で、求人を出しても集まらない。運転代行はタクシーのようにアクリル板がなく、感染リスクを恐れる人もいる」と嘆く。

　加えて、コロナ禍で酒席の在り方が変化したことも、代行業者を利用しにくい一因となっている。関社長によると、コロナ禍前の繁忙期は午前2時ぐらいまで配車依頼があったが、最近は2次会に流れるケースが減り、1次会が終わる午後9時半から11時半ごろまでの約2時間に依頼が集中するからだ。

　「台数が少ない中、依頼時間が集中するのでさばききれない」。関社長が明かす。全国の運転代行業者を紹介するサイト「代行ナビ」を運営する「ヒラコー」（福岡市中央区）の平川浩輔社長（31）は「台数減と運転手減で常連客を優先し、新規客まで対応できてないことも電話がつながらない一因では」と分析する。

　その結果、代行業者を確保できずに飲酒運転し、摘発される事例も相次ぐ。

　和歌山県教委は11月、飲酒運転で海中に転落した男性職員を懲戒免職。高知市教委も同月、酒気帯び運転で検挙された市立中学校勤務の女性職員を懲戒免職にした。いずれも飲酒後に代行を頼もうとしてつかまらず、自分で運転したという。

　全国でも飲酒運転撲滅に力を入れる福岡県。県警交通企画課の松島浩司・統括管理官は「飲酒運転は他の人や自分の人生を台無しにする。酒を飲むと判断力は鈍るが、最後まで自分を律して代行業者を呼ぶなどしてほしい」と呼び掛ける。

　警察庁によると、全国の運転代行業者数はコロナ禍前の2018年で8637業者だったのが、21年は8106業者と約1割の減。実際には休業している業者も多く、実態は更に少ないとみられる。

　代行を定期的に利用するという熊本市の会社員の男性（37）は「地方は公共交通機関が少なく『車社会』で代行がつかまらないのはつらい」と漏らす。

　このような状況から、警察庁や国土交通省は1月、コロナ禍で苦しむ運転代行業を支援するよう都道府県に2年連続で依頼。独自の支援制度を設けている自治体もあるが、売り上げ減を十分に補える状況まで至っていないのが現状だ。

　公益社団法人「全国運転代行協会」（東京）の金澤毅専務理事は「地方では次の日に車が必要という人が多く、運転代行は飲酒運転撲滅の観点からも社会に欠かせない存在だ」と指摘。その上で「コロナの影響が長引き、経営が苦しい事業者が多い。飲酒運転を防ぐためにも追加の支援策を検討してほしい」と訴える。【城島勇人、佐藤緑平】

毎日新聞 2022/12/14 17:00（最終更新 12/14 17:00） 1635文字
https://mainichi.jp/articles/20221214/k00/00m/040/004000c

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