【環境】軍事排出という「抜け穴」 [朝一から閉店までφ★]

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軍事排出という「抜け穴」
八田浩輔

毎日新聞 2022/11/15 06:00（最終更新 11/15 06:00）

　長期化するロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、地球環境にどれほどの悪影響を与えているのでしょうか。実は、世界の軍事・防衛部門からの温室効果ガスの排出量はブラックボックスと化しています。そこには、ある大国の政治的な影響力が影を落としていました。【外信部・八田浩輔】

　「平和なくして効果的な気候政策はありえない」。ウクライナのゼレンスキー大統領は、エジプトで開かれている国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議（COP27）に寄せたビデオ演説でそう強調した。
これには敵対するロシアも異論をはさむ余地はないだろう。ベトナム戦争で米軍がまき散らした枯れ葉剤、湾岸戦争に伴うペルシャ湾の原油汚染などを挙げるまでもなく、今も昔も戦争は最大の環境破壊要因である。

　COP27では、ウクライナ環境省が欧州の専門家などの協力の下、ロシアの軍事侵攻がもたらした温室効果ガス排出量の試算を発表した。
それによると、燃料や兵器の使用、火災、避難民の移動、破壊された施設の再建などを含めた直接・間接的な排出量は二酸化炭素（CO2）換算でおよそ8300万トン。2月下旬の侵攻開始後7カ月間の被害から見積もったという数値は、北欧スウェーデンの年間排出量の2倍を上回る。

　これまで特定の戦争による温室効果ガスの排出量はほとんど検証されてこなかった。それどころか、平時においても軍事・防衛部門からの排出は気候対策の大きな「抜け穴」であり続けた。
原因の一つは米国にある。初めて先進国に温室効果ガスの排出削減を課した京都議定書は、米国の要求に沿って軍事排出は計算の対象外とされた。後継にあたるパリ協定でも報告は義務付けられていない。

　限られたデータから軍事排出の規模がおぼろげながら把握できるようになったのは、ここ数年のことだ。英ダラム大学のオリバー・ベルチャー准教授は、
「隠れた」軍事排出を白日の下にさらし、国連を通じて各国に報告を義務付けるよう訴えてきた。ベルチャーさんたちの研究グループによると、…

https://mainichi.jp/articles/20221114/k00/00m/030/277000c

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国内外の異なる部署で取材する14人の中堅記者が交代で手がけるコラム。原則、毎日1本お届けします。