買わされ続けて着物７５０万円　高齢者を狙う「次々販売」の狡猾手口 [蚤の市★]

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「次々販売」と呼ばれる悪質商法が多発している。高齢者らを〝お得意さま〟にして、立て続けに高額商品の売買契約を結ぶ手法。商品は布団や宝石などさまざまだが、高齢者を引き込む足掛かりになりやすいのが「着物」だ。大阪高裁では９月、次々販売の違法性を認定し、着物販売会社に約４００万円の損害賠償を命じる判決が確定した。およそ７カ月間で約７５０万円もの商品を買わせたセールスマンの手口とは－。

自宅まで車で送迎
「見ていきませんか」。平成３０年５月、大阪市内の着物販売店の前を通りかかった女性（９０）は店員に声を掛けられて店内に。しかし、それが次々販売の入り口だった。

セットで安くすると繰り返され、約３０万円の着物セットを購入。女性は「買わないと帰れない雰囲気だった」と振り返る。

女性は１人暮らし。同じ日用品を何度も購入してしまうなど物忘れがひどく、後にアルツハイマー型認知症と診断される。だが、このときは症状を自覚していなかった。

店の担当者は何度も女性の自宅まで車で迎えに行き、催事会場へ連れて行った。着物は季節や訪問先によって、ふさわしいものが異なる。

「海外の人にも褒められる」

「パーティーで着て楽しんでください」

巧みにセールストークを重ねる担当者。会社主催のパーティーに女性を招き、ファッションショーのモデルとして着物姿を披露させたこともあった。

女性は最終的に約７カ月間で、分割払いも含めて約７５０万円分の商品を購入した。海外の建造物を模した柄の特別セット（２３９万円）を買わせた２カ月後に、別の特別セット（２５０万円）の売買契約をさせるという〝波状攻撃〟だった。

生活を支えるのは月１８万円の年金。年収の３倍以上の契約をして首が回るはずがなく、翌年２月に「暮らしていけない」と家族に相談。家族が確認すると、すでに預貯金はほとんど残っていなかった。

会社側は「正当」と反論
女性と家族は令和元年、契約の取り消しを求めて、大阪地裁に提訴。認知症による判断力の低下に付け込み、過量に着物を購入させたと違法性を訴えた。

一方、販売会社側は「女性が自発的に購入しており、判断能力に疑問を抱かせる事情はない」と正当な契約だったと反論。巧みな営業か、それとも認知症に付け込んだ悪質商法か－。主張は真っ向から対立した。

大阪地裁は３月、最初の３回（１４５万円分）については、金額からも「違法とはいえない」と判断。しかし、それ以降の契約については「判断能力の低下に乗じた暴利行為」と違法性を認め、すでに支払った代金など約３９０万円の賠償を命じた。

販売会社側は控訴したが、９月に大阪高裁が棄却。判決が確定した。

それでも女性の悔恨は消えない。弁護士事務所では、「家族に迷惑を掛けて申し訳ない」とうつむく女性を、長女（６５）が「売り方が悪いと証明されたんだよ」と励ましていた。長女は「何を買ったのか分からないような状況で次々と売りつけるなんて…」と憤る。

「迷わず相談を」
同様の事例は各地で相次いでいる。国民生活センターによると、昨年度の「次々販売」の相談は４３００件以上に上る。

大阪市は９月、認知症の高齢者らに高額な着物などを強引に購入させ、市の３度の是正勧告にも従わなかったとして、市消費者保護条例に基づいて市内の別の着物販売会社名を公表した。

被害が相次ぐことを受け、大阪弁護士会は今月１３日に電話相談「きもの等販売被害１１０番」を実施した。担当者は「１人暮らしの高齢者は家族に相談できず、発覚した時点で被害が深刻化しているケースも多い。不安を感じたらすぐに弁護士らに相談してほしい」としている。（地主明世）

産経新聞　2022/10/15 06:00
https://www.sankei.com/article/20221015-7LLEMVLORBPFLNWCIOEMIYESJY/

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