【名古屋市立大教授】「短期間で八割が打ったということは効果が減退する時期も重なる。社会としての抵抗力は急激に落ちる可能性が高い」 [影のたけし軍団★]

影のたけし軍団 ★

振り返るコロナ禍２０２１

昨年に続き、新型コロナウイルス一色だった２０２１年も間もなく暮れる。国内では７月下旬に過去最大の第５波が始まり、医療現場が逼迫（ひっぱく）。
一方で、ワクチン接種が進み、治療薬も登場するなど明るい材料もそろってきた。

愛知県や名古屋市の新型コロナ対策に携わる名古屋市立大医学部教授、中村敦さん（５９）に一年を振り返ってもらい、来年の見通しを聞いた。

感染の波が大きくなるたび、東京や大阪といった都市圏を中心に医療が逼迫した。何とか持ちこたえた印象の愛知も、
診療の中核となった医療機関の多くは高度医療を担う大学病院や地域の救急医療を支える医療機関だった。本来の診療が制限された感は否めない。

感染者が急増した直後は病床や人員の転用が間に合わない。感染予防と早期治療に力を注いで重症化を防ぎ、入院患者を増やさないことが最も大事だ。

■ワクチン

国内では二月からワクチンの接種が始まった。「メッセンジャーＲＮＡ（ｍＲＮＡ）」を利用したワクチンは、感染や発症を防ぐ効果が高い。
現在までに約八割が二回の接種を終えており、新型コロナに対する社会の集団免疫を、ある程度獲得できている状態だ。

九月以降の感染者数急減に、接種の広がりが果たした役割は大きいだろう。
ただ、短期間で八割が打ったということは、効果が減退する時期も重なる。社会としての抵抗力は急激に落ちる可能性が高い。

■来年は

世界保健機関（ＷＨＯ）が「懸念される変異株（ＶＯＣ）」に指定したオミクロン株は心配な要素。重症化しやすいという報告は今のところない。
ただ、高齢化が進んだ日本でどうかは分からない。他のＶＯＣより遺伝子変異が多いが、点滴薬のゼビュディは、この株にも有効との報告がある。
流行地域で早期投与ができる体制づくりが必要だ。

年明けから、ワクチンの追加接種も本格化する。この株に対する抗体を得るためにも接種は重要だ。
副反応があった人も多いと思うが、感染と副反応のリスクを考えた上で、二回目までと同様、高い接種率になることを期待したい。

各地でオミクロン株の市中感染が報告され、感染の第六波が想定される。この一年で蓄積した知見を基に、第五波より重症者数を抑えられれば国内は終息が見えてくる。

年末年始に羽を伸ばしたい気持ちは分かるが、引き続き三密の回避などの基本的な対策を上手に講じてほしい。

なかむら・あつし　１９６２年生まれ。名古屋市立大卒。
呼吸器病、感染制御が専門で、日本感染症学会理事。今年３月から中部の８県を含む同学会中日本地方会代表を務める。
https://www.chunichi.co.jp/article/390013#:~:text=%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B3