「多様な性」に鈍い政治　同居、結婚、就職…生きる中で壁多く [蚤の市★]

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　「入居はお断りします。トラブルは避けたいので」。福岡市の三好不動産の原麻衣さん（40）は、ある同性カップルのことを覚えている。せっかく気に入ってもらえたのに、管理する別の不動産会社に断られた。理由は「男性同士だから」。理不尽だと思った。

　性的少数者（LGBTQ）の部屋探しのハードルの高さは聞いていた。関係性を根掘り葉掘り尋ねられたり、男性同士だと「暴力団関係者ではないか」と誤解されたり…。好きな人と暮らすことすら認められない。

　業界の風潮を打破したく、5年ほど前に自身もバイセクシュアル（両性愛者）だと社内で打ち明け、セミナーを開催した。支店には多様性を象徴する「レインボーマーク」を掲示した。管理会社や家主を粘り強く説得。これまでに100件以上の入居を実現させた。

　近年、ようやく同性をパートナーと認める制度が普及し始めている。それでも貸し出しを拒む所はあり、続柄を「知人」としか書かせてくれない管理会社もある。

　コロナ下で開かれた今夏の東京五輪・パラリンピックは、少しだけ心のもやもやを消してくれた。五輪の開会式で国歌を披露した歌手は虹色のドレスで「性の多様性」の大切さをPR。世界が注目するこの舞台で、性的指向や性自認を明かした選手はこれまでで最も多い。

　マイノリティーはもとより多くの不安を抱えている。新型コロナウイルスによって生じた社会のひずみがそれを増幅させ、追い詰める。LGBTQの情報を発信するプロジェクト「プライドハウス東京」が12～34歳の当事者1681人を対象にコロナ禍の影響を聞いたアンケート。「就職活動中。景気が悪くなると不利益をより一層受けそう」といった悲鳴が寄せられ、生活が困難との回答は73％に達した。

　五輪はそれを忘れさせる“魔法”だったのか。不動産業界の現場に身を置く原さんは「認知が広がっても、差別は全然なくなっていない」と言う。

　視線は国会にも向く。今年3月、札幌地裁は同性婚を認めないのは「法の下の平等に反する」として「違憲」と判断。「日本で同性婚に肯定的な意見が増えてきたのは近年。国会が違憲性を認識することは難しかった」との言及について、南野森・九州大教授は「同性カップルの法的保障を考えるよう国会にボールを投げた」と受け止める。

　それでも動きは鈍い。理解を促すためのLGBT法案の国会提出は見送られ、一部議員からは「種の保存に反する」など差別発言が相次いだ。福岡市の支援団体の三浦暢久さん（44）は指摘する。「差別に苦しみ、将来に絶望する人がいる。当事者を守る法は命に関わる問題だ」

　先進7カ国（G7）で同性婚などを整備していないのは日本だけという。　（平峰麻由）

西日本新聞　2021/10/15 6:00
https://www.nishinippon.co.jp/sp/item/n/816204/

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