【開戦前夜】日米首脳会談、ルーズベルトは「無意味」と判断した [上級国民★]

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コーデル・ハルと野村吉三郎（1941年2月、ワシントン）　（Ｃ）Underwood Archives／Universal Images Group／共同通信イメージズ

日米首脳会談、ルーズベルトは「無意味」と判断した
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/295614

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　戦間期、日本の政治指導者は他国の政治責任者とただの一度も首脳会談を行ったことがなかった。各国はしばしば顔を突き合わせて懸案を話し合うことがあった。ヨーロッパの国々は地理的にも会見が可能であったが、日本の首相にとってそれらの国々を訪問するのは大変だし、相手国の指導者が日本を訪ねてくるのも時間がかかりすぎた。

　21年間の戦間期に一度も首脳会談がないことはすぐに２つの理由が思いつく。第１が、日本の首脳と会っても実りがない、つまり経綸がないと判断されていたこと。第２は、日本の政治的、軍事的立場には妥協性がなく、交渉は事務レベルで構わないと思われていたこと、などが容易に浮かぶ。簡単に言うと、日本は国際社会で孤児になりやすい体質を持っていたのである。あるいは井の中の蛙の状態だったのだ。

　そういう事態の中で、１度だけ首脳会談が開かれる可能性があった。昭和16（1941）年８月のことである。日米交渉が行き詰まりの状態になって、日本側はアメリカに「近衛・ルーズベルト首脳会談」を提議したのである。駐米大使の野村吉三郎が国務長官のコーデル・ハルに申し入れたのだが、そこには日米交渉が暗礁に乗り上げて、最高責任者が話し合うこと以外に、状況打開の道はないとの判断があった。

　野村の申し入れにハルも表面上は乗り気になり、検討しようと約束した。ルーズベルトも、首脳会談に応じてもいいと答え、野村に対して「アラスカがいいか、それともハワイか。いや第三国でもいい」と上機嫌であった。

　野村の報告を受けた近衛内閣は、早速その準備に入った。陸軍省の日米交渉担当の将校は随員で同行することになり、背広を新調した。頭髪も伸ばして軍人に見えないように、つまり文官のように変えて渡米の日を待った。

　だが結局、この案は潰れた。日本側が中国からの撤兵、南部仏印からの撤兵、三国同盟からの離脱、満州国の承認などで、寸分も譲る気配がないため、ルーズベルトもハルも、会談は無意味と判断したからだった。あえて言えば、近代日本でこの時が首脳会談に最も近づいたときであった。

　ルーズベルトは政治家として、この会談そのものに意味を求めていなかった。いずれ日本が軍事発動するよう持っていくために「あやしておく」という手段だったのだ。（つづく）