【神奈川県】「共生社会」PRに1億円超　「何目指すのか」疑問の声 [蚤の市★]

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　2016年7月、相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら45人が殺傷された事件を受け、神奈川県は「ともに生きる社会かながわ憲章」を策定し、差別のない共生社会を目指している。だが、22年度の県民の認知度の目標が50％なのに対し、20年の調査では22・9％。県は広告費などの事業費を1億円以上投じているが、認知度アップありきの姿勢には疑問の声も出ている。

　憲章を策定したのは16年10月。「私たちは、障がい者の社会への参加を妨げるあらゆる壁、いかなる偏見や差別も排除します」などと4項目を挙げ、県民の半数の認知を目標とした。

　県は「ともに生きる社会実現推進事業」として毎年度、広告費などを計上している。毎日新聞が開示請求した資料によると、事業費総額は、17年度2955万円▽18年度2129万円▽19年度7208万円▽20年度2409万円――の計約1億4700万円。新型コロナウイルスの影響があった20年を除き、事件のあった7月に実施している追悼式の費用も含まれている。

　このうち、「ともに生きる」のロゴが入ったチラシや横断幕などの製作、設置費は17～20年度に計約1100万円。また、毎年7月の推進週間に新聞や駅に広告を出す委託事業費も計3445万円に上った。

　支出規模が4年間で最大だった19年度の事業費のうち、半分以上は「SNS等を活用した憲章普及啓発業務委託」（3838万円）だ。憲章のロゴや動画を製作、SNS（ネット交流サービス）やウェブで普及させる業務を委託し、10～20代がターゲットの啓発活動を展開した。20年度は969万円が支出されている。

　ただ、憲章の認知度は17年に「知っている」（2・8％）と「聞いたことがある」（12％）の計14・8％だったのに対し、20年はそれぞれ6・1％と16・8％の計22・9％に増えただけ。SNSの発信も力を入れたが、10～20代の認知度は15％とさらに低かった。

　県は「事業の一定の効果があった」としたうえで「憲章の周知だけでなく理念の浸透を図ることが大切だ。これからも取り組みを強化していく」としている。

　相模原市でも17年度以降、「共生社会推進事業」があり、17～20年度は計約3300万円。うち約1300万円が市内に路線があるJR東日本や小田急電鉄、神奈川中央交通とタウン誌への広告費で、チラシや啓発グッズ、動画などの費用は約380万円だった。

　神奈川大の青木宗明教授（地方財政学）は「憲章をつくって認知度を上げれば共生社会が実現できるのか疑問だ。県は数字ではなく、共生社会の実現には何が必要なのか、何を目指すのか、県民にわかるように説明してほしい」と話している。【高田奈実】

毎日新聞　2021/8/18 19:57
https://mainichi.jp/articles/20210818/k00/00m/040/267000c

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