【強制貯蓄】日銀、強気の常とう句復活　背景に20兆円の皮算用 [上級国民★]

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日銀、強気の常とう句復活　背景に20兆円の皮算用
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB257SK0V20C21A5000000/

新型コロナウイルス禍の収束が見通せないなか、日銀が景気の先行きに楽観的な姿勢をみせている。象徴的なのが「前向きの循環メカニズム」というコロナ禍前に使っていた常とう句の復活だ。強気シナリオの背景には、20兆円にも達すると見込む「待機資金」の存在がある。

「コロナの収束後は所得から支出への前向きの循環メカニズムが強まり、日本経済はさらに成長を続ける」。日銀は4月下旬に公表した経済・物価情勢の展望（展望リポート）の基本的見解に、こう盛り込んだ。前向きの循環メカニズムという表現を使ったのは、実にコロナ前の2020年1月以来だ。その後、黒田東彦総裁も同じ言葉を使い、鈴木人司審議委員も26日の講演で言及した。

前向きの循環メカニズムとは、企業収益の改善とともに賃金上昇などを通じて個人所得も増え、消費が活性化して収益がさらに伸びるという一連の流れを指す。現状の日本は海外と比べワクチン接種の遅れが目立ち、こうした明るいシナリオは想定しにくいが、ある日銀幹部は「しっかりした回復経路をたどっている」との認識を示す。

実際、4月の展望リポートでは21年度の実質成長率は4.0%、22年度は2.4%と従来の見通しから上方修正した。強気シナリオの根拠の一つに、日銀が同リポートで「強制貯蓄」と名付けた待機資金の存在がある。経済学の学説では、貯蓄はその動機によって区別が付く。例えば将来への漠然とした不安や災害などの不測の事態に備える「予備的貯蓄」などがある。

これに対して「強制貯蓄」は、新型コロナの影響で外出や旅行が難しくなり、本来発生するはずだった消費が半ば強制的に貯蓄に回った部分を指す。具体的には、可処分所得に感染拡大前の平均消費性向をかけ算することでコロナがなかった場合の個人消費を算出。その消費水準と実際の消費水準の差を強制貯蓄と定義した。

日銀の試算では、強制貯蓄は20年の1年間で20兆円に達した。定額給付金による一時的な貯蓄増の影響を除いても、1年間の可処分所得の約7%という無視できない規模だ。コロナの影響が続くなか、当面は強制貯蓄はさらに積み上がるとみている。

日銀の中心シナリオでは、ワクチン普及に伴いこうした強制貯蓄は徐々に取り崩されるという。強制貯蓄は主に中・高所得者層がサービス消費を抑制することで生じており、経済活動が再開しても一気に消費に回るのではなく、徐々に取り崩されると見込む。旅行や外食などはまとめて消費するものでもないため、むしろ中長期的に景気の押し上げ効果を期待できるとみる。

24日にはワクチンの大規模接種も始まり、東京・大手町には多くの高齢者が押し寄せている。先行する米英ではサービス業を中心に需要が急回復している。「個人消費が想定以上に上振れする可能性も念頭に置く」（幹部）
ただし、緊急事態宣言は再延長含みで、足元の景気には一段の下押し圧力が強まっている。強制貯蓄が日銀の期待通りに先々の消費に回るのか、あるいは日本の成長期待の低さから貯蓄にとどまり続けるのか。大きな焦点になる。

（佐伯遼）

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