【一橋大学名誉教授】高齢者のワクチンも完了しない日本は、経済再開世界の仲間はずれに [影のたけし軍団★]

影のたけし軍団 ★

野口悠紀雄　一橋大学名誉教授

政府は高齢者を対象とするワクチン接種を7月中に完了させるとしているが、実現可能性は疑わしい。
65歳未満については、完了まであと1年近くかかる可能性がある。他方で、感染拡大は収まらない。

今年の夏に欧米諸国が経済を再開する中で、日本が置き去りにされる。
これを回避するには、ワクチン接種を飛躍的に加速させる必要がある。

65歳以上の高齢者を対象としたのワクチン接種が行なわれているが、依然として遅々としている。

政府の公式サイトによれば、5月13日時点において接種を行なった高齢者は約70.5万人だ。
これは65歳以上人口3600万人の約2%に過ぎない。接種が始まったのが4月12日だから、これが1ヵ月の実績だ。

このペースで進めば、高齢者接種が終わるまでに51ヵ月、つまり4年以上かかることになる。

予約も混乱している。
菅総理大臣は、7月末までに高齢者の接種を完了するとしているが、はたしてできるかどうか、大いに疑わしい。

政府が5月12日に公表した調査結果によると、高齢者へのワクチン接種を7月末までに終えられないと回答した自治体が、全体の約14%に達した。

東京都では、７月末終了予定の自治体は67.7％しかなかった。
つまり、約3分の1の自治体では終了しないわけだ。千葉や神奈川では、9月以降になると回答した自治体があった。

以上は、65歳以上の高齢者に限ってのことだ。16歳から64歳の国民については、開始の予定さえ決まっていない。
ましてや、いつ終了するかは、まったく見当がつかない。

菅総理大臣が約束しているとおり、仮に65歳以上が7月末で完了するとしよう。
すると、4月12日から始めて3ヵ月半かかったことになる。仮にこのペースで進むとすると、15～64歳人口は約7500万⼈と高齢者の約2倍なので、
完了までに7ヵ月かかることになる。つまり来年の2月頃までかかる！

高齢者の実際の接種状況を前提とすれば、もっと遅れる可能性が高い。

また、対象人数が多くなれば、接種のための医療関係者の確保など、さまざまな困難が増すから、
さらに時間がかかる可能性がある。したがって、接種完了まで、あと1年以上かかることは、十分ありうる。

5月14日には、緊急事態宣言が北海道、岡山、岡山に拡大された。
これによって、宣言は、東京、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡を含む9都道府県に拡大されることとなった。

緊急事態宣言にもかかわらず新規感染者数が増え続けるのは、変異株が増えているためだ。
また、緊急事態宣言による営業自粛要請が効果を発揮していないためであろう。

今後、高齢者のワクチン接種が進めば、それによって新規感染者数が減少すること期待される。

しかし感染を広めているのは、社会的活動が活発な64歳未満の人々よるものだろう。そして、変異株の場合には、若年層も悪化しやすいと言われる。
その年齢層でのワクチン接種に見通しがつかないとなると、感染者が今後どれだけ減少するかは疑問だ。

今年の夏頃の状況はどうなるだろうか？

上述したことから、現在のワクチン接種ペースが飛躍的に改善されない限り、65歳未満の接種完了がほとんど進んでいないことは、ほぼ確実だ。
したがって、感染状況が目立って改善することはなく、経済活動の完全再開にはいたらない可能性が強い。
悪くすれば、緊急事態宣言が続いていることも考えられる。仮に、第4波を抑えられても、第5波が襲う可能性が強い。

欧米では経済活動が再開され、国境を越える人と人の交流も活発に行なわれるようになる。
しかし、日本が上述のような状況では、そこに加わることはできない。こうして、主要国のなかで、日本だけが置き去りにされる危険がある。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/83318#:~:text=%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B3

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