【あおり運転】「厳罰化」も執行猶予止まり　ドラレコ大活躍も被害が減らない憂慮すべき実態 [鬼瓦権蔵★]

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あおり運転を厳罰化した改正道路交通法が施行された昨年6月30日から12月末日までの半年間で、28都道府県の警察が58件（57人）を摘発したと警察庁が公表した。
立件に必要な客観的証拠として、ドライブレコーダーの映像が9割以上の54件で残されており、ドラレコが被害の申告と事件の立証に威力を発揮するツールであることが明らかになった。
一方、これだけ社会問題になり、厳罰化された後でもあおり運転が絶えないという憂慮すべき実態がある。（事件ジャーナリスト　戸田一法）

●　摘発された多くは30～50代

　警察庁によると、58件の内訳は「車間距離不保持」が最も多く13件（うち「著しい危険」が2件）、次いで「急ブレーキ」が11件（同5件）、「幅寄せ・蛇行（だこう）など」が10件（同2件）、「急な車線変更」が9件（同2件）、「高速道路上の駐停車」が5件（同5件）、「左からの追い越し」が4件（同1件）、「執拗（しつよう）なクラクション」が3件、「逆走」が2件、「高速道路上の低速走行」が1件。
「ハイビーム」は0件だった。

　うち2件は自転車で、いずれも埼玉県の30代の男。
警察庁は個別の事件について具体的に明示していないが、これは乗用車の前に飛び出す危険な運転を繰り返し、地元住民から「ひょっこり男」と呼ばれていた埼玉県桶川市の無職（事件当時はパート従業員）、成島明彦被告（33）＝公判中＝とみられる。

　58件のうち逮捕は9件、ほか49件は書類送検。
都道府県別では大阪が7件、埼玉と岡山が6件、北海道が4件の順で多かった。
年齢別では40代が最も多く18人。次いで30代と50代が13人、20代が6人、60代が5人、10代と70代が1人。30～50代が多い傾向が見て取れる。

　あおり運転ではなかったが、前の車との距離を必要以上に詰めたなどとして、全国の警察が道交法の「車間距離不保持」で摘発したのは、前年同期比1656件減の6536件、自動車運転処罰法の危険運転致死傷罪（妨害目的）は、同6件減の12件だった。
これは、厳罰化が抑止力として効果を発揮したと見ていいだろう。

●　「厳罰化」も執行猶予止まり

　「あおり運転」を巡っては、道交法が改正されるまで罰則規定などはなかったが、17年6月に東名高速道路で発生した夫婦死亡事故をきっかけに社会問題化。
19年8月には常磐自動車道のあおり運転殴打事件の映像がテレビなどで繰り返し流され厳罰化を求める声が強まり、法に「他車の通行を妨害する目的」と明記された。

　具体的には、前述した10の行為を摘発対象とし、罰則は3年以下の懲役または50万円以下の罰金、違反点数は25点で免許は一発取り消しとなり、欠格期間は2年。
「著しい危険行為」と認定されれば5年以下の懲役または100万円以下の罰金、違反点数35点で欠格期間は3年とさらに重くなる。

　刑法の殺人罪が適用され最高裁で判決が確定した事件（過去記事『あおり運転で進む厳罰化、バイク跳ねて「はい終わり」に殺人罪で懲役16年』参照）もあるほか、悪質な死傷事故には自動車運転処罰法の危険運転致死傷罪が適用されるケースも想定される。

　それでは、あおり運転として立件された容疑者・被告は、どれぐらいの罪になるのか。
実はまだ判例が少なく、法の改正後、全国で初の逮捕者となった大分県別府市の男（47）が昨年12月1日、懲役2年6月、執行猶予4年（求刑2年6月）の判決を受けたぐらいしか見当たらない。

大分地裁判決によると、男は同年7月10日、別府市の国道10号で約2.8キロにわたり、軽乗用車で前方の乗用車に急接近。
クラクションを鳴らしたり、前に割り込んだりした。その後、乗用車を停車させ、20代男性の肩や首を引っ張り「包丁で刺すぞ」と脅した。

　判決理由で裁判官は「運転は執拗で、重大な事故を引き起こしかねなかった。被害者が受けた恐怖は大きい」と指摘。
一方で、被告の男が公判で「今後、運転はしない」と述べたことなどから、情状酌量を認め執行猶予とした。

●　「ひょっこり男」は実刑が必至

　筆者が探した限り、判決が言い渡されたのはこの1件しかない。
公判請求（起訴）されず、略式起訴・命令の罰金で済んだケースがあったかもしれない。
いずれ、大分地裁判決が今後の基準になるだろうから、事故にならず、反省（している「ふり」も含む）の意思を示せば、塀の向こう側には落ちないということだ。

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