【鹿児島】軽トラ運転の男が酒気帯びで向かった免許更新手続き「まだ時間がある」と缶酎ハイ、そしてひき逃げ　依存症の末路… [ばーど★]

ばーど ★

〈人間スクランブル　かごしま法廷傍聴記〉

　「もう一度聞く。運転する予定があったのに、飲酒したのはなぜか」。弁護人が声を張り上げると、被告の男はうつむき、言葉を詰まらせた。それまで犯行時の様子などをすらすらと答えていたものの、しばらく沈黙。「駄目だと分かっていたのだが…」と消え入りそうな声だった。

　飲酒ひき逃げの罪で起訴された４０代の男は、アルコール依存症の診断を受けていた。その日、酒気を帯びて父親の軽トラックを運転し、向かった先は鹿児島市の県交通安全教育センター。運転免許証の更新手続きをするためだった。

　前日の昼から夜にかけ、自宅で缶ビール３本や焼酎を何杯も飲み続けた。夜中にうとうとし、ふと目が覚めたのは午前２時半ごろ。「二度寝したら起きられなくなる」と家を飛び出した。「飲酒運転の自覚はあった」。既にセンターラインをまたぐほどふらついていた。

　午前４時、同センター近くに着いた。「まだ時間がある」とコンビニに立ち寄り、そこでも５００ミリリットルの缶酎ハイを飲んだ。酒臭いのが自分でもはっきり分かった。

　丁字路を減速せずに右折し、直進してきたバイクと衝突。バンパーが外れるほどだったにもかかわらず、覚えているのは「何かにぶつかった衝撃音と、ハンドルを持って行かれる感覚だけ」という。

　「バイクは（フロントガラスに衝突して）目の前だったのに、本当に分からなかったのか」「なぜその場で車を降りて確認しなかったのか」。弁護士や検察官の相次ぐ質問にも、男は「酒の影響で記憶が曖昧」と繰り返すだけだった。

　軽いけがで済んだバイクの男性が自ら１１９番。男は同センターで更新手続き中、館内放送で父親の名前が呼ばれ、ようやく事の重大さに気付いた。

　バス運転手を４０年以上勤めた男の父親が証言台で「飲んだら絶対に乗るな、と注意していたのに」と語気を強めた。検察官に「父親の言葉を真剣に聞いていたのか」と問われると、男はうなだれた。

　事件への思いを弁護士に問われ、父親は「大変なことをしてしまった。被害者の方に申し訳ない」とはっきりとした口調で答えた。「今まで以上に注意し、息子をサポートする。車でなければ行けない場所へは私が送り迎えをしていきたい」。男は飲酒を今後控え、依存症の治療を受けると誓った。

　迎えた判決公判。執行猶予３年と実刑こそ免れたものの、８年間の免許取り消しという重い行政処分を課された。「車が危険な乗り物だと忘れないで。８年たっても忘れないで」。裁判官は重ねて諭した。判決言い渡し後、無言で一礼した男の胸に、ハンドルを握る重みが刻まれたのだろうか。

11/17(火) 18:23　南日本新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/6e8ca3b500e36e64d07037d96617e9fed0694cb8

【鹿児島】軽トラ運転の男が酒気帯びで向かった免許更新手続き 「まだ時間がある」と缶酎ハイ、そしてひき逃げ 依存症の末路… [ばーど★]

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