【石川】美麻奈比古・白山神社に十二題八境、一流歌人詠んだ江戸の穴水 [樽悶★]

樽悶 ★

美麻奈比古・白山神社に残る境内や周辺の景観を和歌に詠んだ「十二題八境」と絵図＝穴水町川島の同神社で
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吉田兼敬・兼雄が「崇徳梅」を題材に詠んだ歌の歌碑前に解説看板を設置した四柳嘉章宮司＝穴水町川島の同神社で
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題材場所に解説看板設置進む

　穴水町川島の美麻奈比古（みまなひこ）・白山神社で、江戸時代中期の一七八九年に編さんされ、境内や周辺の景観を和歌などに詠んだ「十二題八境」が見つかった。同時期に活躍した神道家の吉田兼敬（かねゆき）・兼雄（かねお）や、津幡出身の俳人河合見風（けんぷう）らの句も確認でき、四柳嘉章（よつやなぎかしょう）宮司（７４）は「穴水町だけでなく文化的にも価値が高い資料だ」と話す。町民や観光客に知ってもらおうと、歌が詠まれた場所に解説看板の設置も進めている。　（森本尚平）

　十二題八境は、四柳宮司が蔵で古文書の整理をしていた際に発見した。四柳宮司の先祖で当時の宮司、四柳長門守嘉致（ながとのかみよしおき）が編さんし、「天明九年酉二月」と年月が残されている。

　十二題は境内や周辺にある十二カ所の旧跡が題材となっており、穴水の地名の由来になったとされる「穴水堂」や鎌倉時代に勅使（君主の使者）が滞在した境内の屋敷跡「勅使殿旧礎」などについて歌が詠まれている。吉田兼敬・兼雄は、崇徳（すとく）上皇の勅使が参向し神社に贈ったとされる「崇徳梅」について歌を寄せ、境内にその歌碑が設置されている。

　十二題の中には河合見風が、穴水湾に流れる小又川の河口に存在する二つの石「二津石」について「浮橋に礎見せて霞哉（かすみかな）」と詠んだ句も残る。四柳宮司によると、見風は穴水に二十六人の門人がいた。「江戸中期の穴水は俳句の盛んな地域で文化的レベルも高かったことがうかがえる」と説明する。

　八境は、神社に関係した穴水の風物で、四季に合わせて選定されている。当時の境内やその周辺を描いた八一年の絵図が神社に現存し、四柳宮司はその絵と見比べながら歌が詠まれた場所を探している。これまでに八カ所が確認され、計十六枚の解説看板を設置した。

　四柳宮司は「このような資料が残っていること自体が珍しく、一流の歌人や俳人が歌を詠んでいたことを知る貴重な地域資料。町民や観光客が町の歴史や文化を知るいい機会になる」と話している。

中日新聞 2020年11月14日 05時00分
https://www.chunichi.co.jp/article/153914