供給網寸断、影響は来年も　コロナ危機、投資に変化は　日本貿易保険・黒田篤郎社長 [蚤の市★]

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新型コロナウイルスの感染拡大は貿易や投資に深刻な影響を及ぼしつつある。ビジネスの現場で何が起きているのか。日本貿易保険の黒田篤郎社長に聞いた。
――貿易・投資への影響をどうみていますか。
くろだ・あつお　経済産業省製造産業局長などを経て、2019年から現職。60歳

「世界経済にとって、石油危機やアジア経済危機、リーマン・ショックを超える戦後最大のインパクトになりうる。企業の声を聞くと、自動車や電子部品、機械、鉄鋼、化学、食品、インフラなど広範な分野で、貿易や投資に深刻な影響が続く可能性がある」

――回復にはどれくらいかかるでしょうか。
「今回の危機の特徴はまず、世界第2位の経済規模を持ち、サプライチェーンに複雑かつ深く関与している中国から感染が始まったことだ。中国からのヒトとモノの流れに沿って世界に感染が広がった。
各地で工場や都市、国境が閉鎖され、サプライチェーンが寸断された結果、経済や貿易・投資の悪化が加速度的に世界に広がっている」

「2003年のSARS（重症急性呼吸器症候群）の感染が中華圏止まりだったことと対照的だ。リーマン・ショックでは貿易が危機前の水準に戻るまでに2年かかった。来年も厳しい状況が続くだろう」

――各国政府・企業がとるべき対応は。
「貿易・投資先の多様化など、サプライチェーンに一定のゆとりを持たせる必要がある。日本企業は05年の中国での反日暴動以降、中国以外にも拠点を構える『チャイナプラスワン』戦略を、さらにタイとその周辺国にネットワークを広げる『タイプラスワン』戦略を進めてきたが、その一層の磨き上げが必要だ」

「医療制度や財政手段が十分でない途上国に感染が広がれば、世界全体の混乱収束にかなりの期間がかかる。先進国による財政金融政策の協調に加え、途上国に対する総合支援策も不可欠になるだろう。
ただし、サプライチェーンに余裕を持たせつつも、グローバリゼーションは今後も不可避であり、貿易・投資を拡大していくことが重要だ」

――日本貿易保険はどう対応していますか。
「民間保険会社の休業補償保険では新型コロナの影響による取引損失は基本的に保険金支払いの対象にならないが、政府が全額出資する公的保険機関である当社は、自然災害の一環ととらえ支払いの対象とする。
1カ月以上投資先の事業が止まったり、取引先の倒産などで3カ月以上の支払いの遅延が起きたりした場合、保険金を支払う」

「感染の影響で中国からの部品供給が止まり、タイの子会社の事業継続が難しくなった場合など、サプライチェーン途絶の損失も支払い対象とすることを新たに決めた。
既契約者だけでなく、今後、投資や輸出を準備する事業者や、操業中の工場などの既設案件でも保険に加入できる」

――相談状況は。
「1月下旬から4月中旬までに、投資保険と輸出保険合計で161件の相談を受けた。2月までは中国の案件がほとんど。3月以降は東南アジアや中東、欧州、米国など29カ国・地域に及ぶ。すでに損害が発生したとの連絡も19件受けた」
（聞き手は編集委員　松尾博文）
NIKKEI 2020/4/28 2:00
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58556440X20C20A4EE8000/

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