【新型コロナ】コロナ重症で腎不全、米国で相次ぐ。日本も対応急務…人工透析機器が不足 [みんと★]

みんと ★

新型コロナウイルスに感染した患者が急性腎不全を起こすケースが相次いで報告されている。米紙は専門家の話として、新型コロナの重症患者の2～4割が急性腎不全を発症しているとの見方を伝えた。日本でも発症事例が確認されている。国内に慢性腎不全に使う人工透析機器の数は多いが、急性腎不全への転用は難しいといい、迅速な対応が求められている。

新型コロナの感染が広がる米国では、重症患者が急性腎不全を起こし、緊急の人工透析が必要になるケースが急増している。透析に使う装置や透析液などの供給が追いつかないという。

米紙ニューヨーク・タイムズは現地の専門家の声として、新型コロナに感染した重症患者の2～4割が急性腎不全を発症しているとの見積もりを伝えている。外来患者用の装置で急場をしのぐ病院が多く、機材だけでなく人手の不足も深刻だとしている。

独医療機器フレゼニウスの北米子会社は人工透析装置などの供給を増やすと発表した。まずは約150台を確保し、必要とする米国の病院に配備する。人工透析用の消耗品の供給量も従来の2倍近くに増やす。

新型コロナ患者と急性腎不全の関係は、中国・武漢でも指摘されていた。英医学誌ランセットに掲載された武漢での調査報告によると、調査対象となった入院患者の15%に急性腎不全の症状がみられた。うち3分の1が人工透析などの治療を受けていた。

もともと透析治療を受けていた患者が、感染拡大後も定期的な透析のために外出し、それが感染につながっているとの見方もある。フランスの生物医学庁は4月上旬、「透析患者の2.5%が新型コロナに感染したと推定される」と発表した。仏国民全体に対する感染者数は判明分で0.2%で、透析患者の感染率の高さが際立つ。透析で週3回程度通院せざるを得ず、公共交通機関などで感染した疑いがあるという。

新型コロナと急性腎不全の明確な関係は明らかになっていない。ただ、近畿大学の谷山佳弘准教授（腎臓内科）は「重症の感染症患者は急性の腎障害を起こす危険性が高まる」と話す。ウイルスや細菌が体内で増えると炎症などを促す物質が増加し、腎障害の原因になるという。また「腎臓は大量の酸素を使うため、感染症による肺炎などで肺から取り込む酸素が減ると腎不全につながる」とも指摘する。

日本透析医会で新型コロナウイルス感染対策ワーキンググループ委員長を務める菊地勘医師によると、日本でも重篤患者が急性腎不全を発症した事例は既に確認されている。

日本では慢性腎不全については治療体制が手厚い。日本透析医学会の調査によると、2018年末時点で国内の慢性透析患者数約34万人に対し、最大で45万8千人まで受け入れを増やす余地があるとしている。

しかし、急性腎不全の場合、こうした慢性腎不全用の装置ではなく、集中治療室（ICU）で専用の人工透析装置を使って血液を浄化するのが一般的だ。慢性腎不全用の機器を急性用に転用できるケースは少ない。

菊地医師は「大学病院のような大病院でも、同時に受け入れられる急性腎不全の患者は2～3人程度。米国並みに感染者が急増すると対応できなくなる」と警鐘を鳴らす。

日本透析医会は海外の状況などを受け、急性腎不全に対応できる医療スタッフや人工透析装置の配置状況を早急に調査する方針だ。もともと海外に比べて数が少ないICUの確保などと合わせ、今後の患者の増加に備えることが急務になっている。

日本経済新聞 2020年4月27日 23:00
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58560120X20C20A4EA1000/