【満蒙開拓の記憶】ようやく辿り着いた故郷をふたたび追われ　満州と福島で翻弄された人生

PRIDE OF URAWA ★

戦後75年、戦争体験者が減っていくなか、ひとりひとりの心の奥底に刻まれた不都合な記憶を見つめることは、歴史の継承だけではなく、現代社会への問いかけでもある。
長野県飯田市に生まれ育った岩間政金さんは、戦争中、満蒙開拓団として現在の中国東北部に渡った。敗戦後、故郷の村に帰る家はなく、福島県に移り住む。山林を開拓し、畜産で生計をたててきた。しかし、2011年の原発事故で、再び故郷を追われ、避難生活を余儀なくされた。

ー中略ー

満州へ渡って8年が経った1945年、19歳の岩間さんは現地で召集され、軍事訓練を受けていた。開拓団員は召集されないと聞いていたが、成人男性が次々と入隊する。満州で日本の軍事を担っていた関東軍の主力が、戦況の悪化で南方戦線へ移動。その穴埋めのための召集だった。
そして、1945年8月9日、ソ連軍が満州へ侵攻すると、岩間さんは、戦場の最前線に立たされた。圧倒的な武力の前に追い詰められるなか、命じられた作戦は、爆弾を抱えて戦車に飛び込む自爆攻撃だった。
「友だちが何人も死んでいる。爆弾抱えて一緒に爆発するんだから、ぜんぜん形なんて無いよ。一瞬で終わってしまうよ。いや、酷いぞ。仲間が命を落とすのは一番辛かったな」
岩間さんの順番が来る前に、部隊は降伏。捕虜になりそうなところを逃げ出し、山野をさまよった。食べ物もなく息絶える者、ソ連軍の銃弾に倒れていく者。振り返らずに、逃げ続けた。ようやく満州国の首都だった新京（現：長春）に辿り着いたのは半年後で、引き揚げたのは2年後だった。
当時、満蒙開拓団も平和の戦士であり、アジアの平和のために戦うのだと教えられ、岩間さんもそう信じていた。しかし、戦場での過酷な体験を振り返り、つぶやいた。
「俺たちはソ連軍の侵攻を遅らせるための、捨石にされたんだ」。

ー中略ー

岩間さんが福島に移住して20年余りが過ぎた1971年、東京電力福島第一原子力発電所の営業運転が始まった。原発の建設をめぐっては、地元で反対の声もあがったが、受け入れる自治体にはメリットがあった。政府からの交付金や、産業振興を目的にした融資や補助金などだ。これといった産業もなく財政基盤の脆弱な自治体には魅力的な内容だった。振り返れば、満蒙開拓団の送出も原発の誘致も、同じような構図で進められていた。
2011年3月12日、岩間さんはそれまで聞いたことのない大きな音に驚いた。
「すごい音だったよ。葛尾村の山奥にも聞こえてきたんだから、すごかった。」
福島第一原発で爆発が起きていた。3月14日には、村が全村避難を決め、岩間さんも福島市内の体育館へ避難した。しかし、牛舎に残した牛が心配で、すぐに帰宅。牛にエサを与え、ひとり村に留まって暮した。すると、村の職員や警察官が訪ねてきて、避難を促した。岩間さんは事情を説明したが、「岩間さんひとりだけ避難しないのは困るから」と村の決定に従うよう説得された。結局、福島市内の体育館から二日おきに通ってエサをやった。
「毎日食べていたのに、二日に一回じゃ駄目だな。みるみる痩せていくのがわかった。通うのもたいへんだったけど、弱っていく牛がかわいそうだったな。」

いかそ

4/20(月) 18:00配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200420-00010000-sbc-l20&p=1

参考
巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問主義書
http://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a165256.htm

【満蒙開拓の記憶】ようやく辿り着いた故郷をふたたび追われ 満州と福島で翻弄された人生

【満蒙開拓の記憶】ようやく辿り着いた故郷をふたたび追われ　満州と福島で翻弄された人生