【政治】小池都知事の「夜の街」封鎖にのぞく首相との暗闘

砂漠のマスカレード ★

長らく“待機”モードだった東京都の小池百合子知事が、突然トップスピードで稼働し始めた。新型コロナウイルスが猛威をふるう中、頻繁に記者会見を開き、良くも悪くも派手に矢を放っている。

いち早くロックダウン（都市封鎖）に言及して都民を混乱させたかと思えば、「夜の街」の集団感染を防ぐため、徹底的な自粛キャンペーンを展開。
その会見の翌31日には、安倍首相からの要請によって、コロナ対策について官邸で意見交換にも応じた。コロナ対策においては首相よりも存在感を見せているのでは、と思わせるほどだ。

大衆扇動の才能が危機の局面で役立っている節もある。新型コロナウイルス封じ込めの救世主になろうとする野心ものぞく。

■　「夜の街」封鎖作戦

「感染経路が不明な症例のうち、夜間から早朝にかけて営業しているバー、ナイトクラブ、酒場など接客を伴う飲食業の場で感染したと疑われる事例が多発している。都民にはこうした場への出入りを控えていただくようお願いしたい」

3月30日夜、小池氏が都庁内で記者会見を開いた。ポイントは「夜の街へ行かないで！」。都民が納得できる、わかりやすいメッセージである。無意識に飲みに行く中高年や若者たちの動きを止めることは今や最大のコロナ対策といえる。

一方、夜の街からすれば凄まじいダメージだ。小池氏が念頭に置いているのは女性が接待する店舗、すなわち「密接、密閉、密集」になりやすいクラブ、キャバクラ、スナックだ。
店側からすれば、命に代えられないことはわかっているが、「補償がないのに営業はやめられない。こっちは生活がかかっている」という理屈がある。
本来なら、補償や経済支援をセットにしないと「夜の街」の自粛、封鎖は難しい。このままでは倒産・廃業が続出し、ネオン街が壊滅してしまう。

しかし、小池氏に躊躇はない。具体的な補償の枠組みや支援策についても、まだほとんど触れていない。
封じ込めに効果があり、都民の支持があれば経済活動が止まってもいい。命と医療体制の維持が優先である――。
小池氏の判断は冷酷だが、冷静でもある。

折しも、国民的芸能人である志村けんが新型コロナによる肺炎で死去した。志村は銀座のクラブ、麻布十番のガールズバーなどに通い続けてきたことは周知の事実だ。
志村の感染経路は判明していないが、「夜の街」で罹患したとみていい。小池氏が「夜の街へ行かないで！」というメッセージを発するには効果的なタイミングだった。

■　沈黙のホステスと客

3月30日夜の記者会見には、破壊力ある爆弾がいくつか仕込まれていた。
そのひとつは、厚生労働省のクラスター対策班の西浦博氏（北海道大大学院教授、理論疫学）を同席させ、ネオン街関係者、すなわちホステスや客の一部が聞き取りに応じていないことを暴露したのだ。

西浦氏は「保健所の調査に応じていただけない患者も多い。介入が一部困難であることが想像される一方、積極的に対策を講じなければならない数の伝播が始まっているものと考えられる」と、さらりと述べた。
「20、30代は店員、客は比較的高齢」であることも明らかになった。夜の街に繰り出していた顧客の情報を漏らすまいと必死に抵抗しているホステスが目に浮かぶ。
自粛ムードの中、クラブ通いをしていた中高年の客が証言を拒んでいることも容易に想像できる。
西浦氏は「接客を伴う飲食業、特定業種の場で感染した事例が3割」とも語った。

「キャバクラ嬢が保健所の聞き取りに応じていない」「銀座のクラブがクラスターか？」。
ワイドショーが飛びつきそうな要素が満載だ。敵は新型コロナウイルスのはずだが、いつのまにか「夜の街」（ホステスらも含む）が怨嗟の対象にすり替わっている。
2016年の都知事選でも、小池氏は地味な対抗馬ではなく、旧勢力の代表格である有力自民都議を仇敵に仕立てて圧勝したときを思い出す。要はわかりやすい「敵」や「怨嗟対象」を見つけてくるのだ。

■　再始動

小池百合子東京都知事の動きが激しくなったのは3月23日だ。小池氏は同日、「事態の今後の推移によっては、都市の封鎖、
いわゆるロックダウンなど強力な措置を取らざるを得ない状況が出てくる可能性がある」といち早く都市封鎖に言及した。都民も敏感に反応してしまい、翌日からはスーパーで食料品や日用品の買い占め騒動が起こった。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200331-00059975-jbpressz-pol&p=3
3/31(火) 17:05配信