【京都】死別の涙、僧侶が癒やす　東本願寺、養成課程にグリーフケア

樽悶 ★

グリーフケアを学び、僧侶役と遺族役に分かれたグループワーク＝福岡県筑後市の九州大谷短大で（東本願寺提供）
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　大切な家族や友人と死別し、悲しみに暮れる人たちを支援する「グリーフケア」の講座を、真宗大谷派の本山・東本願寺（本部・京都市）が僧侶の養成課程に取り入れ始めた。お経を読むだけでなく、遺族に真摯（しんし）に向き合い、寄り添う僧侶を育てる。本山として取り組むのは各宗派の中でも初めてという。　（浅井弘美）

　大谷派によると、弔いの形が簡素化し、参列者が二十～三十人の「家族葬」や、火葬だけで済ます「直葬」が増えた。僧侶と檀家（だんか）の関係が希薄になっていることもあり、葬儀場では、悲しむ遺族らにどう声を掛ければよいのか分からず、思い悩む僧侶もいるという。「お坊さんは、お経だけ読んで帰ってしまった」という苦情も寺に寄せられていたため、昨年度から講座の実施を検討していた。

　本年度は、大谷派の寺院住職になるための教育機関全十二校のうち、真宗大谷派名古屋別院（名古屋市中区）と九州大谷短大（福岡県筑後市）の二カ所で実施。グリーフケアに取り組む一般社団法人「リヴオン」（東京都荒川区）のスタッフを講師に招き、名古屋別院は六月に三回、九州大谷短大は四～十一月に計二十回の講座を開いた。

　講座では、僧侶役と遺族役に分かれて対話するロールプレーや模擬通夜などが企画された。

　長く介護した認知症の親の死には「解放された」という気持ちが入り交じったり、子どもの自殺には「防げなかった」と自身を責めたりと、遺族にも多様な感情があることを認識する。その上で雑談から入り、故人を振り返ってもらう中で「どんな気持ちであっても自然な思いとして、口にしていいんですよ」と促す大切さを学んだ。

　北海道蘭越町にある法誓寺の黒萩貴仁さん（３１）は名古屋別院での講座に参加。二十歳のときに母親の智子さん＝当時（４９）＝を心臓病で亡くした悲しみを自分の中に封じ込めてきたが「感情を吐き出すことの大切さを知った」と話す。東京都中野区の高徳寺が実家で九州大谷短大二年の新井了吾さん（２４）は「葬儀や通夜で悲しみにどう寄り添えばいいのか学べた」と振り返る。

　大谷派は二〇二〇年度、グリーフケアを指導する講師役の僧侶を養成。二一年四月から全十二校への導入を目指す。同派教育部長の速水馨さん（５０）は「喪失感を抱える人に寄り添い、いつでもどこでもグリーフケアが当たり前にある社会にしたい」と話している。

＜グリーフケア＞　「グリーフ」は英語で深い悲しみという意味で、悲しむ人の立ち直りを支援する。各地のＮＰＯ、病院、高齢者福祉施設などが取り組む。家族や友人らを亡くした人は悲しみや怒り、安堵（あんど）といったさまざまな感情を抱き、不眠や食欲不振などの身体的影響も見られる。ケアに当たる人は、そうした反応を自然なものとして受け止め、悲しみに寄り添い、分かち合う。２００５年に兵庫県尼崎市で起きた尼崎ＪＲ脱線事故を契機に注目され、１１年の東日本大震災で取り組みが広がった。

東京新聞 2019年12月24日夕刊
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