【大阪】“気付き”の場、存続を　大阪人権博物館、市民ら運営サポート

樽悶 ★

　部落差別やいじめなどさまざまな社会問題を紹介する大阪市浪速区の大阪人権博物館が、橋下徹元大阪市長による補助金見直しで支援を打ち切られて６年。市民の寄付やボランティアに支えられた懸命な運営が続く。

　「ＬＧＢＴ（性的少数者）の問題で難しいのは、当事者が家族にも打ち明けられない場合があることです」。８月下旬、ボランティアガイドの北谷隆二さん（６３）の解説を、校外学習の高校生が真剣な表情で聞いていた。北谷さんは博物館で週２回は案内に立つ。「多くの人の『気付き』を間近に見て、僕の方が元気をもらっています」

　日本の近代史と結び付いた在日コリアンやアイヌ民族への差別、高度成長の「影」である公害問題、平成以降に関心が高まったセクハラや児童虐待。朝治武館長（６４）は「さまざまな問題を横断的に見ることで、日本社会を俯瞰（ふかん）し、普遍的な価値としての人権を考えられる場所」と自負する。

　２０１３年に府と市は、運営する公益財団法人への年間計約１億２０００万円の補助金を全廃。１５年には、博物館がある市有地の明け渡しを求めて市が提訴し係争中だ。

　収入の約８５％を失った館は、存続のために入館料を値上げし、開館日数も短縮。一時２０人以上いたスタッフは５人まで減った。約３０人のボランティアガイドのほか、イベントの企画から草刈りまで手弁当で行う「応援団」、１口６０００円の会費を負担する約６００人の「サポーター」など、さまざまな形の市民の支援で存続している。

　入館料や書籍の販売、寄付などの収入は光熱費と人件費でほとんど消え、展示に使えるのは年５０万円ほどだが、展示スペースは縮小せず、特別展も毎年実施してきた。１４年にＪリーグの試合で観客が人種差別的な横断幕を掲げた問題では、サッカーと差別を巡る企画展を大阪弁護士会と開くなど、他団体との共催を増やしている。

　朝治さんは「市民の自主的な活動とつながるのがあるべき姿。苦境も、新しい博物館のスタイルをつくる助走期間と捉えている」と力を込めた。

　■ことば

大阪人権博物館

　大阪市浪速区に１９８５年、部落差別や部落解放運動の関連資料を中心に展示する大阪人権歴史資料館として開館。９５年に現在の名称となり、他の人権問題の紹介にも力を入れるようになった。約３万点の資料を所蔵し、累計入館者数は約１６８万人。現在は水～土曜に開館。入館料は大人５００円など。愛称はリバティおおさか。

毎日新聞 2019年9月1日
https://mainichi.jp/articles/20190901/ddl/k27/040/211000c?inb=ra

【大阪】“気付き”の場、存続を 大阪人権博物館、市民ら運営サポート

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