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【映画】 なぜ煉獄杏寿郎は「夢」を見なかったのか 『鬼滅の刃』の重要シーンでわかる「炎柱」の生き様

1 :擬古牛φ ★:2021/02/15(月) 08:43:17.33 ID:???
★なぜ煉獄杏寿郎は「夢」を見なかったのか 映画『鬼滅の刃』の重要シーンでわかる「炎柱」の生き様

植朗子2021.2.14 11:32dot.

 映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は、2020年10月の公開から約4カ月で興行収入370億を突破した。
映画のキーパーソンである炎柱・煉獄杏寿郎の名セリフ「心を燃やせ!」はSNSでもトレンド入りし、彼の生き様は多くの人を魅了した。
今なお根強い人気を誇る、若き「炎柱」の生き方を改めて考えてみる。
(以下の内容には、映画の内容、および既刊のコミックスのネタバレが含まれます)
*  *  *
■映画『鬼滅の刃』の主人公は煉獄杏寿郎

 漫画『鬼滅の刃』は、主人公の竈門炭治郎(かまど・たんじろう)が、
鬼にされてしまった妹の禰豆子(ねずこ)を「人間に戻す」ために、鬼たちと戦う物語である。

 しかし、「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」では、後半の場面で、鬼討伐部隊「鬼殺隊」のリーダー、
炎柱・煉獄杏寿郎(れんごく・きょうじゅろう)と、「上弦の参」と呼ばれる鬼・猗窩座(あかざ)との戦闘シーンがメインで描かれている。

 しかも、この映画のエンドロールに使用されているイラストは、すべて煉獄杏寿郎である。
彼が愛した煉獄家の家族、いつも戦いを見届けていた杏寿郎の鎹鴉(かすがいがらす※伝令役として剣士のそばにつき従うカラス)、
彼の日輪刀など、計5枚のショットがスクリーンに映し出される。驚くべきことに、その他のキャラクターは登場しない。
これらをふまえると、この映画の主人公は、間違いなく煉獄杏寿郎であるといえよう。

■煉獄さん、「どこみてるんですか?」

 煉獄杏寿郎の原作初登場は、6巻・第45話「鬼殺隊柱合裁判」のシーンである。
杏寿郎は、炭治郎に隊律違反を指摘し、「鬼もろとも斬首する!」と一方的に断罪する。
鬼殺隊を率いる産屋敷耀哉(うぶやしき・かがや)の命により、炭治郎たちへの処罰を思いとどまった杏寿郎であったが、
炭治郎たちとの再会時には冒頭から「うまい!うまい!」と叫びながら、大量の弁当を食べ続け、周りを驚かせる。

 その後も会話は続くが、杏寿郎は炭治郎の問いかけに、素早く親切に返答はするものの、その目は何を見ているのかよく分からない。
答え方も極めて“せっかち”だ。
驚きのあまり炭治郎は「えっ!?ちょっともう少し…」「待ってください そしてどこみてるんですか」と、思わず杏寿郎に詰め寄ってしまう。
当の杏寿郎は、そんなことをまったく意に介さない。杏寿郎はいったい何を見ていたのだろうか。
時折、射抜くような目で相手を見つめはするものの、彼は自分のペースで話し、戦い、いろいろなことを素早く処理していく。(続く)

dot. https://dot.asahi.com/dot/2021021300017.html

続きは>>2-4

2 :擬古牛φ ★:2021/02/15(月) 08:43:43.06 ID:???
>>1の続き

■「柱」としての抜きんでた「才」

 物語が進むと、「鬼が出る」無限列車の中で、鬼・魘夢(えんむ)が本格的に攻撃を始める。
魘夢によって乗客は強制的に眠らされてしまうが、炭治郎だけが攻撃に気づき、目覚め、単独で戦闘を開始する。
しかし、「状況がわからない…」「連携がとれない」と、炭治郎は焦りに焦る。

 そんな炭治郎のもとへ、目覚めたばかりの杏寿郎が近寄り、炭治郎に状況説明と、戦闘の連携方法を素早く指示して立ち去る。
なんと、8両編成の列車のうち、たった1人で後方5両の乗客を守ると言い残して。
そして、杏寿郎はその言葉通りに、無限列車の乗客200人の命を守り切ることに成功するのだった。

■鬼に見せられた「幸せな夢」

 無限列車にあらわれた鬼の魘夢は、「夢を見ながら死ねるなんて幸せだよね」と言いながら、炭治郎たちに「幸福な夢」を見せて撹乱させる。
「夢から目覚めたくない」と思わせることによって、戦闘意欲を削ぐためだ。

 炭治郎には「母と弟妹が生きているころの夢」を見せた。
善逸には「禰豆子とふたりきりで出かける夢」を、伊之助には「みんなのリーダーとして慕われる夢」を。
では、杏寿郎が見た「夢」はいったいどんなものだったのか。

 鬼・魘夢の血鬼術(けっきじゅつ※鬼による幻惑の術、戦闘のために使用する術)は、
敵に夢を見せている間に、相手の「精神の核」破壊するというものだ。

<ねんねんころり こんころり 息も忘れて こんころり 鬼が来ようと こんころり 
腹の中でも こんころり 楽しそうだね 幸せな夢を見始めたな>(魘夢/7巻・第55話「無限夢列車」)

 しかし、煉獄杏寿郎は、乗客の中でただひとり「幸せな夢」を見ない。
まだ眠りが浅い間に、仲間を守る短い夢を見たものの、その後、杏寿郎が見たのは、「幸せ」とはかけ離れた「現実的」な夢だった。

■なぜ煉獄杏寿郎は「幸せな夢」を見ない? 

 杏寿郎は幼少期に母親を亡くしている。
「生まれついて 人よりも多くの才に恵まれた者は その力を 世のため人のために 使わねばなりません」。
母親が説いてくれた「人としての強さ」は、杏寿郎に大きな影響を与えた。
だが、杏寿郎は「もし母親が生きていたら」と夢想することはできない。
彼にとって母親の死は厳然とした事実で、それが決してくつがえらないことを知っているからだ。
では、亡き母が生きていたころの夢を見る炭治郎とは、何が違うのか。

続く

3 :擬古牛φ ★:2021/02/15(月) 08:44:09.18 ID:???
>>2の続き

 炭治郎は、母と弟妹が殺害された時の自分の行動を悔いている。過去の出来事を、まるで昨日のことのように、毎日毎日後悔している。
なぜ、自分は、あの日、ひとりだけ鬼の来ない場所にいたのだろうかと。ごめんな、ごめんな、と心の中で謝り続けている。
一方で、炭治郎の「幸せな夢」の中に、父親が元気な姿で登場することはない。なぜか?
炭治郎にとって、父親は「病死」という自然の摂理で亡くなっているからだ。どんな人間でも、人を「寿命」から守ることはできない。

 杏寿郎の母の死因も、病によるものだった。
最愛の母の、若すぎる死だが、それでも杏寿郎は「人間の生のルール」を破ろうとは思わない。
それは、杏寿郎が「人間として生きること」の真理を十分に理解し、
すべての「人間の生」に起こりうる不幸を、受け止める準備ができているからだ。
これは彼の母親の教えでもある。

<老いることも 死ぬことも 人間という儚い生き物の美しさだ 
老いるからこそ 死ぬからこそ 堪らなく愛おしく 尊いのだ>(煉獄杏寿郎/8巻・第63話「猗窩座」)

 では、杏寿郎の「父親」に関する夢はどんな夢だろうか。実は、これも「幸せな夢」ではない。
父・煉獄槇寿郎(れんごく・しんじゅろう)は妻を亡くした後、酒に溺れ、鬼殺隊「炎柱」であることの誇りを見失ってしまった。
杏寿郎は「自分が柱になれば、元のような父に戻ってくれるのではないか?」と淡い期待を抱いていたが、
実際に杏寿郎が「炎柱」に就任した際にも、父はひどい言葉を投げつけるだけだった。

■杏寿郎にとって大切な「真理」と「現実」

 杏寿郎は「寂しさ」の中で戦っていた。母と約束した「自分の責務」を果たすために。
そのため、杏寿郎は決して、うその、「幸せな夢」を見ることができなかった。

 戦闘の後、そんな杏寿郎のもとに亡き母があらわれる。「立派にできましたよ。」と母は優しくほほ笑みかけた。
死んだ人間との邂逅は、非現実的な夢物語だと思われることが多いが、『鬼滅の刃』においては、
死んだ人間との再会はまぎれもない「現実」で、自分の務めを果たしきった杏寿郎の心を、真の意味でねぎらい癒やした。

 彼は、眼前の敵を見すえ、戦況を打開する方法を模索するために「今」を見つめていた。
煉獄杏寿郎の目にうつるのは、悲しくて厳しい現実世界であったが、幸せだったころの思い出は、
彼の心の中に「真実」として、ずっとあり続けたのだった。

◎植朗子(うえ・あきこ)
1977年生まれ。現在、神戸大学国際文化学研究推進センター研究員。専門は伝承文学、神話学、比較民俗学。
著書に『「ドイツ伝説集」のコスモロジー ―配列・エレメント・モティーフ―』、
共著に『「神話」を近現代に問う』、『はじまりが見える世界の神話』がある。

以上

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