【埼玉】作り出された「差別」　静岡大名誉教授、加須で講演会　狭山事件、石川さんの冤罪訴え [樽悶★]

樽悶 ★

講演する黒川みどりさん＝埼玉県加須市内で2024年4月6日午後3時52分、「市民の会」の石井昭一郎さん提供
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　狭山市内で1963年に女子高生が殺害された「狭山事件」。「部落差別が生んだ冤罪（えんざい）」を訴え続けている石川一雄さん（85）＝94年に仮出所＝の半生を著書にまとめた静岡大名誉教授の黒川みどりさんの講演会が加須市内で開かれた。黒川さんは事件の背景に「被差別部落への偏見があった」とし、近代以降も政府によって意図的に作り出されたとする、新しい視座を提示した。

　市民グループ「北埼玉地区狭山裁判を支援する市民の会」の主催で、約100人が訪れた。被差別部落問題を研究のテーマに据えてきた黒川さんは、石川さんの聞き書きを元に「被差別部落に生まれて　石川一雄が語る狭山事件」（岩波書店、2023年5月）を出版した。

　講演で黒川さんは、石川一雄さんが別件逮捕された63年5月23日直後の新聞記事を紹介。石川さんが住んでいた被差別部落について「悪の温床」「町のスラム地区」「特殊地区／環境のゆがみが生んだ犯罪」などと報じていたことを示し、被差別部落に対し「『犯罪の温床』と見なす社会のまなざしがあった」と語った。

　そうした偏見は「近代から積み重ねられてきた」とし、その実例として挙げたのが1918年、富山から全国に広がった米騒動。米価高騰を背景にした民衆暴動である。黒川さんは「政府側は意図的に被差別部落が暴動の中心であり、『暴民』とする言説を流し民衆を分断し、体制の危機を乗り切った。当時の内務省の高官の証言でも明らかになっている」と指摘。被差別部落を「暴民」視する、社会に染み込んだ「まなざし」によって石川さんが犯人に仕立てられたと述べた。

　また、貧困ゆえに学校に通えずほとんど読み書きのできなかった当時の石川さんに、脅迫状を書く能力がなかったことや、証拠とされる遺留品に指紋が残されていなかった点などを挙げながら、冤罪であると強調。長期化する第3次再審請求（06年）を念頭に置いて「たくさんの冤罪事件が起きているが、他の事件と違って『部落差別』の壁もあると思う」と、その偏見が今も続いているとの見方を示した。

　講演会には石川一雄さんの妻、早智子さん（77）も参加。「石川一雄が生きている間に再審を開始してもらいたい」と訴えた。

　会場には県議会議長、自民県党県連幹事長を歴任した元県議の秋山清さん（96）が姿を見せ「石川さんが無実だということがよく分かった。冤罪は絶対にあってはならない。みなさんの力で石川さんの冤罪を晴らしましょう」と、呼び掛ける一幕もあった。【隈元浩彦】

2024/4/17
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