なぜ、男性宅は狙われたのか...江戸川の殺人事件、見えぬ接点と不自然な説明 [蚤の市★]

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なぜ、男性宅は狙われたのか...江戸川の殺人事件、区立中教諭逮捕から1週間　見えぬ接点と不自然な説明

　東京都江戸川区の住宅で男性住人を殺害したとして区立中教諭の尾本幸祐容疑者（36）が逮捕されてから17日で1週間となるが、犯行に至った経緯は謎のままだ。男性宅は容疑者の通勤路沿いだったが、金品が盗まれたり2人の間でトラブルがあったりした形跡は見つかっていない。なぜ、男性宅は狙われたのか。（榊原大騎、鈴鹿雄大）
◆逮捕の教諭は黙秘
　「2人にどんな接点があったのか、なかなか見えてこない」。警視庁の捜査幹部はこう漏らす。容疑者は逮捕後の調べに対し、容疑を否認した後、黙秘に転じている。動機をうかがわせる供述はないとみられる。
　事件は2月24日午後6時半ごろ発生。江戸川区一之江の住宅で、住人の契約社員山岸正文さん＝当時（63）＝の顔や首を何度も切り付けて殺害したとして、尾本容疑者が今月10日に逮捕された。
　尾本容疑者は昨年4月、区立中に特別支援学級の教諭として着任した。中学校から山岸さん方までは約150メートル。江東区大島で暮らしていた尾本容疑者は、都営新宿線の一之江駅で降り、歩いて中学校に通っていた。この途中に山岸さん方はある。
◆「土足でいいと言われ、土足で家に入った」
　事件までの約11カ月間、2人に接点があった可能性として浮かぶのが、この通勤路だ。
　捜査関係者によると、尾本容疑者は逮捕前の任意の事情聴取に山岸さんと接触したのは「今年1月、学校から駅に向かう途中」だったと説明した。トラブルがあったわけでもなく「男性（山岸さん）から『荷物を運ぶのを手伝ってほしい』と頼まれ、家に入った」という。2月にも家に招き入れられたと話したとされる。
　偶然出会い手助けしただけの関係だったのか—。しかし、捜査関係者によると、山岸さん方からは尾本容疑者のスニーカーと同じ型の足跡が見つかり、尾本容疑者のものとみられる血の付いたマスクや眼鏡も発見された。事情聴取を予期した想定問答とみられるメモも関係先で押収されている。
　尾本容疑者は任意聴取に「土足でいいと言われ、土足で家に入った」「何かにぶつかって鼻血が出た。血の付いたマスクは男性に渡した」などと説明したとされるが、捜査幹部は「あまりにも不自然だ」と話す。
　尾本容疑者は住宅ローンを抱えながら競馬で数百万円の損失を出し、投資での失敗もあったとされる。窃盗目的で侵入した可能性もあるが、別の捜査幹部は「周囲には裕福に見える住宅も多い。窃盗目的だとすると、なぜ山岸さん方を狙ったのかが分からない」と首をひねる。
◆生徒「まだ気持ちが落ち着きません」
　尾本容疑者が不在になって1週間となる学校現場。江戸川区教委によると、事件直後、特別支援学級の生徒数人から不安の声が上がり、今も臨床心理士らが連日、生徒らのケアに当たっている。教委の担当者は「これほど大きな事件は経験がない。今後も必要な支援をしていく」と話す。
　下校途中の区立中2年の女子生徒（13）はつぶやく。「優しい先生だったので、今も事件とのギャップが埋められない。まだ気持ちが落ち着きません」

東京新聞　2023年5月17日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/250362