【考古】「今、グスク時代の研究が熱いです！それと旧石器時代、縄文時代も」　沖縄考古学会５０年　南島が発する普遍性

樽悶 ★

石垣が印象的な勝連グスク＝沖縄県うるま市で、伊藤和史撮影
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　沖縄考古学会が発足して９月で５０年になる。本土と共通する歴史の歩みと、地勢からくる特殊性を併せ持つ沖縄の考古学。最新の研究状況について、会長の上原靜（しずか）・沖縄国際大教授に聞いた。

　「今、グスク時代の研究が熱いです。それと旧石器時代、縄文時代も……」

　最初に挙がったグスク時代を巡り、沖縄考古学の魅力に触れたい。グスク時代とは沖縄独自の時代区分で、１１世紀ごろから琉球王国が成立する１５世紀前半ごろまで。おおむね本土の中世にあたる。

　グスク（城砦（じょうさい））と聞いてすぐ思い浮かぶのは、今帰仁（なきじん）グスクや勝連（かつれん）グスクなど、流麗な石垣が見事な世界遺産のグスクの数々だ。これらが構築されたのがまさにグスク時代。採集が軸の経済から分かれて鉄が普及し、農業が定着し、グスクを拠点に英雄的人物たちが躍動し、覇を競った。

　その間、いくつものグスクが戦闘で落城した。海洋交易国家・琉球王国が東アジアに勇躍していく前史として、すこぶる陰影に富んだ時代だ。

　このグスク時代の開始と展開の実態が、研究の一大争点だ。本土の強い影響下にあったことは確実とみられ、南下してきた武装集団が一挙に支配権を確立したとする説がある。また、後には、沖縄を根城とした倭寇（わこう）が王朝をつくったとする説もある。上原さんによると「グスク時代の初期は日本文化の影響が大きく、後半からは中国の文化が多く入っている」といったあたりが研究者共通の理解という。

　ひとつ興味深いのは、開元通宝という中国の銅銭だ。グスク時代前の貝塚から出土し、従来は先史時代の住人が貨幣という機能を知らずに装身具として珍重したと考えられていた。ところが現在では、先史人は貨幣であると理解し、利用する者が現れ、それが次のグスク時代の権力者である按司（あじ）（地域領主）に成長したとする見方に変わってきているという。

　その背景には、本土との長い交流がある。開元通宝が鋳造された７世紀以降の唐代には遣唐使が盛んに往来し、水や食料を求めて沖縄にも来航した。そうした本土人との物資の交換に貨幣が使われたとみるわけだ。

　支配者がある時、外部から突然に現れたのではなく、国家形成への熟成期を想定する。農業に代わって、交易が社会を成熟させたのだろうか。グスク時代開始を巡る「外圧説」に対し、「内的発展説」といえよう。

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　グスク時代の他にも、独自の時代呼称がある。グスク時代の前は「沖縄貝塚時代」と呼ばれ、貝塚時代前期はおおよそ本土の縄文時代、後期は弥生から平安時代に相当する。しかし、古い遺跡が発見されるにつれ、本土との差異より同一文化圏とみる学説が説得力を高め、近年は本土と同じ「縄文時代」「弥生～平安並行時代」とする呼称が増えているそうだ（先島地域は別の文化）。

　とはいえ、呼称の統一は簡単ではない。昨年、学会が編集・出版した一般向けの普及書「南島考古入門」では、苦肉の折衷策として、旧石器時代とグスク時代の間を「新石器時代」と表記した。本土の考古学界ではまず見ない呼称である。時代の呼称には、沖縄の歴史の固有性を評価するか、共通の要素に基づく普遍性を重視するかの研究観の違いも反映され、一筋縄ではいかないのだ。

　上原さん自身は普遍性を重視する。「考古学は科学なので、共通するところを押さえてから地域性を語るべきでしょう。沖縄の先史文化も縄文時代の一地域性だと私はみています。そういう大きな分類で沖縄を研究し、それにより、日本や世界に共通する文化が解明されることがあるはずです」

　本土は何かと沖縄に固有性を求めがちだと思うが、それも平板すぎる。沖縄考古学の今後の新しい発信に注目したい。

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　学会設立は復帰前の１９６９年。当時、開発ラッシュで遺跡の破壊が進み、文化財保護と考古学の一般への普及を目指して発足した。現在の目的も「そこに尽きます」と上原さんは話した。【伊藤和史】

毎日新聞 2019年8月26日
https://mainichi.jp/articles/20190826/dde/014/040/002000c?inb=ra

【考古】「今、グスク時代の研究が熱いです！それと旧石器時代、縄文時代も」 沖縄考古学会５０年 南島が発する普遍性

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