【国際】第二の「アンブロークン」を中国が製作　「炎のランナー」の“続編”は新たな抗日映画だ [07/20]

★【スクリーン雑記帖】第二の「アンブロークン」を中国が製作　「炎のランナー」の“続編”は新たな抗日映画だ
2015.7.20 11:50

１９８１年製作の英映画「炎のランナー」で描かれた２４年のパリ五輪陸上男子４００メートル
金メダリスト、エリック・リデルのその後を追った映画「ラストレース（原題）」が中国・香港
・米国の合作で製作されている。リデルは五輪優勝後、出生地の中国に戻って宣教活動に身を投じ、
４３年に旧日本軍の強制収容所で脳腫瘍のため死去した。リデル役は「恋におちたシェイクスピア」
（９８年）の英俳優、ジョセフ・ファインズが演じる。

「炎のランナー」はヴァンゲリスの荘厳なシンセサイザーのテーマ曲が有名で、３年前のロンドン
五輪でもこのテーマ曲がよく使われた。天賦の陸上の才能を持ち、人種偏見を超えて友情で
結ばれたユダヤ人青年のハロルド・エイブラムスとスコットランド人のリデルがパリ五輪で
金メダルを目指す実話だ。

本編の最後に登場人物のその後が字幕で示され、リデルの場合は「第２次大戦の終わりに
任地・中国で死亡。全スコットランドが喪に服した」と説明される。彼は中国・天津市に
生まれた。両親は敬虔（けいけん）なクリスチャンだった。「ラストレース」は「炎のランナー」
の正式な続編ではないものの、リデルが収容所で出会った中国人男性（ショーン・ドウ）
との友情が描かれる。

「元五輪メダリストの陸上選手」「旧日本軍の収容所」…これらのキーワードから、
ある映画を連想しないか。女優アンジェリーナ・ジョリーの監督第２作「アンブロークン（原題）」である。

「アンブロークン」は、実在した元五輪メダリストの米陸上選手が第二次大戦で
旧日本軍の捕虜となり執拗（しつよう）な虐待を受ける作品で、昨年末に米国で公開された。
日本では原作における旧日本軍についての記述に重大な誤りがあるなどとして、
一部で反日映画と認定され日本での上映阻止運動に発展。いまだ国内で上映されていない。

中国が「第二のアンブロークン」を作ろうとしているのは明白だ。米ハリウッド・リポーター誌は、
南京大虐殺の犠牲者追悼日の今年１２月１３日に初お披露目したあと、来年３月に公開すると
伝えている。それに併せ、収容所の写真集の出版や生存者らのインタビューを交えた２時間の
ドキュメンタリーも公開するという。「項羽と劉邦　その愛と興亡」（９６年）を手がけている
監督のスティーブン・シンは、「『シンドラーのリスト』（９３年）のような映画でナチスの
強制収容所は知られているが、この日本の強制収容所の話は全世界の観客の共感を得るだろう」と語っている。

ただ、「ラストレース」は「アンブロークン」に触発されて製作されたわけではない。
シン監督がリデルの話を聞いたのは２００５年で、「０８年の北京五輪時に映画を作りたかった」
と明かしている。映画は今年１月にカナダとアメリカで撮影を開始し、中国の天津市や
山東省でも行われ、８月に終わる予定。

今年を「抗日戦争勝利７０周年」と位置付けている中国では、ハリウッドとタッグを組んだ
抗日映画の製作が相次いでいる。ブルース・ウィルスは日中戦争中の旧日本軍による重慶爆撃を
描く「大爆撃（原題）」に出演。メル・ギブソンがなぜか美術監督を務める。こうした風潮の
背景には、巨大市場を抱える中国にハリウッドなどが媚（こ）びへつらい、中国の映画業界が
攻勢を強めているという現状がある。映像の力で反日の空気を醸成させようという手法は、
和歌山県太地町のイルカ追い込み漁を糾弾した記録映画「ザ・コーヴ」（０９年）とも通底する。

さて、日本映画界の海外戦略はというと、例えば５月のカンヌ国際映画祭で「クールジャパン」
を前面に押し出し、くまモンまで投入して日本映画のＰＲイベントを開くのが精いっぱい。
果たしてこのままでよいのだろうか。（ＷＥＢ編集チーム　伊藤徳裕）

http://www.sankei.com/premium/news/150720/prm1507200022-n1.html

【国際】第二の「アンブロークン」を中国が製作 「炎のランナー」の“続編”は新たな抗日映画だ [07/20]

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