【社会】日本国籍の在日コリアン３世の文美月さん（４４）「韓国では街行く人の顔も、どこか親類のよう、それでも永住するのは日本」

★【向き合う力】文美月（１６）日本、韓国両方の視点を持てた　「どっちも好き　それでいい」
2015.6.15 07:00

渡韓した文美月さん（４４）は現地で、自身と同じように世界各地からの留学生たちとの
付き合いを深めた。それは、さまざまな視点を持てるようになり、日本と韓国双方を
「好きな国」と思えるようになった貴重な経験でもあった。

◆米国、ドイツ、スウェーデン…世界中の「仲間」と知り合えた

韓国では街行く人の顔も、どこか親類のように見え、留学後、日本にいた時はよく分かって
いなかったことを理解できるようにもなりました。例えば法事の際に使う食材や、行事の背景などです。

一方で、現代の韓国ではすでに簡略化されている民族行事や風習のうち、在日コリアンが
きちんと守っていることがいくつかあることも知りました。他にも今までよく知らなかった
「文」氏のルーツを少し探してみたりもしました。日本ではただ派手な印象があった韓国なら
ではの色使いに、シックなものがあることも知りました。いつのまにか授業の後に骨董
（こっとう）街に通い、雑貨を探したり、伝統茶屋で過ごしたりするのが大好きになりました。
これらの伝統雑貨がのちに起業したときの最初の商材になったのです。

韓国への理解を深めていく中で最も大きなことは、さまざまな人のいろんな考えに触れ、
日本国内では分からなかった視点を持つことができるようになったことです。
俯瞰（ふかん）的な視点と言い換えてもいいかと思います。

留学した延世大の韓国語学堂には米国やドイツ、スウェーデン、ロシアなど世界各地の
同胞が学びに来ていました。移民だったり、養子だったり、日本の影響が残っていたりと、
各自がいろいろな「背景」を持っていました。

ドイツから来た女性と仲良くなり、毎日のように一緒にランチを食べるようになりました。

◆視野を広げ、さまざまな視点を持たせてくれた

ドイツでは１９６０年代に看護師が不足し、多くの韓国人看護師がドイツへ移住したのだそうです。
お互いのアイデンティティーについてもよく話しをしました。２人で返還前の香港に４日間、
旅行したことがあります。旅先でかかるお金は、２人で「割り勘」にしていたのですが、
私は日本的な感覚できっちり分けようとしたら、彼女に「細かい」と呆（あき）れられました。

このほか、仲良くなった米国の同胞は、肌や髪の色がみんな同じ韓国にいると不思議な
感覚に陥ると同時に、ほっとすると言っていました。米国では、アジア人に言われのない
発言をする人もいるからです。

留学生のうち、日本語圏から来た人が最も多く、在日コリアンが半分、日本人が半分。
ほとんどが熱心な人ですが、中には「親に韓国に留学しろと言われたから来た」と
散財するだけの同胞もいました。

世界各地の留学生らとの交流は、私の視野を広げ、さまざまな視点を持たせてくれたのも事実です。

日本で民族教育を受けた同胞や、私のように通名を使っていた同胞、日韓関係をよくしたいと
熱心な日本の大学生、日本の教育関係出身者、企業の駐在員…。そうした人たちと飲みながら
夜な夜な日韓関係について、話し込むこともありました。

◆勉強熱心、政治・軍事への関心、青唐辛子好き

ところで、韓国の下宿は、朝夕のご飯付きですから、下宿の「一般」学生ともしょっちゅう
顔を合わせます。お弁当２つをもって図書館にこもる人や、早朝に、駅前の大手英語学院での
授業を受けてから大学の授業にいく学生。総じて、日本人より勉強熱心な印象を受けました。
延世大学の図書館はよく満席で、なかなか座れなかったのを思い出します。

他大学で学生のデモがあり、たまたま通りかかった私の洋服に何かのガスがついたのか、
帰宅後に目に染みて涙が出たこともありました。政治、軍隊、さまざまなことを考えよう
している学生の姿勢が印象的でした。

　>>2へ続く

http://www.sankei.com/west/news/150615/wst1506150005-n1.html

ヘアアクセサリーの制作・販売を行う「リトルムーンインターナショナル」を起業した文美月さん＝平成２７年４月、大阪市浪速区（南雲都撮影）
http://www.sankei.com/images/news/150615/wst1506150005-p1.jpg