【朝日新聞】日本兵が連れて行った「黒砂糖の女性」　その後銃声が聞こえ、戻ってこなかった…沖縄戦の痛み、今も抱えて

★失った家族、森で聞いた銃声…沖縄戦の痛み、今も抱えて
寺本大蔵奥村智司2015年6月10日11時46分

砲弾の犠牲になった家族、兵士に銃を突きつけられた弱々しい女性。
７０年前の沖縄戦でみた光景が、今も体験者に「痛み」を刻んでいる。
朝日新聞社が実施したアンケートに、体験者らが苦しい胸の内を語った。

■黒砂糖の女性、森の記憶よぎり「発作」

両手がブルブル震え出すと１０分ほど止まらなくなる。動悸（どうき）が激しくなり、
息も苦しくなる。座覇（ざは）愛子さん（８５）＝那覇市＝は戦後、自分でも
よくわからない症状に悩まされてきた。「発作」が起きるのは、木が茂った山を
見たり枝葉がこすれる音を耳にしたりした時。７０年前、森で見た高齢女性の姿が頭をよぎる。

１９４５年６月中旬、沖縄本島北部・八重岳の山中。米軍の砲撃を逃れ、
２０人ほどの住民とともに壕（ごう）に逃げ込んでいた時のことだ。
着物の腹の部分が不自然に膨らんでいる高齢の女性がいた。若い日本兵２人が
中に何が入っているかを問い、女性は「サーター」だと答えた。沖縄の言葉で黒砂糖のことだ。

「サーターってなんだ」と顔を見合わせたため、本土の兵士だとわかった。
やがて意味を理解した兵士は「くれ」と求めた。

「長男のため食べずに我慢して持っている」。女性は沖縄の言葉で答えた。
すると、兵士は銃を突きつけ、女性を連れて深い森に消えた。
しばらくして銃声が聞こえ、それきり女性は戻ってこなかった。

座覇さんは、当時１５歳。県立第三高等女学校から日本軍の看護要員に動員された
「なごらん学徒隊」の一人として、山中の小屋で負傷兵の手当てをした。
日本軍が守ってくれると信じていたが、裏切られたと感じたという。

戦後、子どもをもうけた。母親になると、「黒砂糖の女性」を突然思い出すようになった。
何度か病院で診察を受けたが、「原因不明」と言われた。今も、月１回ほどは「発作」が起きる。

家族にも話したことのない記憶を、今回の調査で初めて語った。「戦争だけは二度
と繰り返してはいけない。黒砂糖のおばあがそう伝えてほしいと言っている気がするのです」

http://www.asahi.com/articles/ASH6563YZH65TIPE03Q.html

【朝日新聞】日本兵が連れて行った「黒砂糖の女性」 その後銃声が聞こえ、戻ってこなかった…沖縄戦の痛み、今も抱えて

【朝日新聞】日本兵が連れて行った「黒砂糖の女性」　その後銃声が聞こえ、戻ってこなかった…沖縄戦の痛み、今も抱えて