【京都】４０年前から駅への近道、線路歩いた２人摘発

★４０年前から駅への近道、線路歩いた２人摘発
2015年06月07日 10時44分

先月２８日、京都市山科区で京阪電鉄の線路に侵入したとしてパート男性（７２）と
女子高校生（１６）が鉄道営業法違反容疑で山科署に摘発された。

２人は線路を約３０～４０メートル歩いており、危険な行為ではあるが、
刑事責任の追及は異例。厳しい対応の背景には線路を巡る、ある〈慣習〉があった。

現場は同区四ノ宮泉水町の同電鉄京津線諸羽神社踏切―十禅寺道踏切間の線路。
６月４日朝、現場を訪ねると、通学途中の学生らが踏切から線路に入って
そのまま歩き、先の踏切から再び道路に出て行っていた。

歩いていた男子専門学校生（２０）は「駅までの距離が１００メートルほど短くなる。
朝は急いでいるので使っている」と話す。どうやら線路の歩行者らは約５００メートル
先にあるＪＲや京阪、地下鉄東西線の山科駅に向かっているようだ。

周辺は古くからの住宅密集地。駅への道が途中で民家に突き当たるため、
本来はいったん踏切を渡って線路の約５０メートル南にある道路を歩き、
次の踏切を越えて駅側の道に戻る必要がある。だが、一部の住民には線路が
その手間を省くための〈生活道路〉化しているのだ。

◆

近所の無職男性（７７）は「警報機が鳴っても線路を歩いている。子供がまねしかねず、
危険だ」と怒る。近くに住む主婦（６７）は「記憶では４０年以上前から近道として
使われている」と話す。

実際、現場近くの京都市立音羽小学校では日頃から児童らに線路を歩かないよう注意し、
登下校時は踏切付近で地域のボランティアが見守り活動を行っている。

同電鉄によると、現場付近で線路の歩行が原因の死傷事故や緊急停止などが起きたことは
ないが、約４０メートルの区間に「線路内通行禁止」と書いた看板を６枚設置。
毎年春と秋には侵入禁止を呼びかけるチラシを現場や駅前で配布しているという。

だが、線路を歩いていた男子大学生（１９）は「危険だとは思うが、距離も短い。
注意していれば大丈夫」と話す。

◆

摘発された２人は４月２７日、線路を歩いているところを巡回中の同署員に見つかった。
同署には以前から「危険だ」との通報が度々あったが、最近は「取り締まりを行うべき」
との意見も寄せられるようになり、署員が発見した場合、摘発することにしたという。

２人とも「普段から通っていた。危ないことをしてしまった」と反省し、同署は５月２８日、
同容疑で男性を区検に書類送検し、女子高生の書類を家裁に送った。

府警によると、線路内に立ち入ったとして同法違反容疑で逮捕や書類送検された人は
昨年までの５年間で４１人。酒に酔って侵入した場合などが多く、「生活道路として
不特定多数が立ち入るケースの摘発はあまり聞いたことがない」という。

同署は「どんな理由でも危険に変わりはない。近隣家庭には巡回時に注意喚起してきた。
安易な気持ちだったのかもしれないが、違法行為だと認識してもらわなければ」と指摘する。

同電鉄は「啓発チラシに線路内への侵入は法律違反だと明記することを検討したい」
としている。（菊池真司）

http://www.yomiuri.co.jp/national/20150607-OYT1T50011.html

駅方面に向かって線路上を歩く男性（４日午前、山科区で）＝吉野拓也撮影
http://www.yomiuri.co.jp/photo/20150607/20150607-OYT1I50004-L.jpg

地図
http://www.yomiuri.co.jp/photo/20150607/20150607-OYT1I50005-L.jpg