【社会】教師も加わり“葬式ごっこ” 中学生の壮絶いじめの実態

★教師も加わり“葬式ごっこ” 中学生の壮絶いじめの実態
池上正樹 [ジャーナリスト] 【第240回】 2015年6月4日

「不登校」や「引きこもり」に陥ったきっかけ・背景が、学校でのいじめだったという人は少なくない。

「かくいう私も、小学校2年から高校を卒業するまで、ずーーっと、いじめを受けておりました。
それだけ長い間、いじめを受けていましたから、いろんな種類、ありとあらゆるバリエーションの、
いじめを体験してきました」

暗がりの舞台に立ち、40人余りの参加者が聞き入る満員の会場で、そう語りかけるのは、
引きこもり経験のあるパフォーマーの大谷健児さん（27歳）。

5月9日、新宿区西早稲田のＮｅｃｃｏカフェで開催された「ひきこもり大学自己表現学部
×布団の中のアーティスト～五月病を吹っ飛ばせスペシャル～」のひとコマだ。

■クラス全員・担任教師による“葬式ごっこ”という名のいじめ

地方の町に住む大谷さんが今公演で披露したのは、そんな数あるいじめの中でも
「最も印象深かった」という中学生のときの“葬式ごっこ”。

ある朝、教室へ行くと、自分の机の上に、1枚の色紙が置いてあった。
色紙には、クラス全員から、大谷さんが亡くなったことを前提にしたメッセージの
文字がびっしり書き込まれていたという。

「傑作だなと思ったのは、クラス30人中11人が、“おまえは、もう死んでいる”と
書いていたことですね。しかも、担任の先生も一緒になって、書いてくださっていたんです」

「こっちとしては、おいおい、とんだスペシャルゲストをお呼びなすったなって…」

会場に笑いが起こる。大谷さんは、自らの悲しみの過去を乗り越え、
学校でのいじめ被害を笑いという価値に変える、そんなパフォーマー活動を始めたのだ。

「この葬式ごっこがすごいのは、体育祭の400倍、クラスが1つになってまとまった。
それまでは、クラスがバラバラだったんです」

葬式ごっこが行われてから1ヵ月後、合唱コンクールがあって、クラスは準優勝を飾った。

「その一方、私は葬式ごっこの翌日、飛び降り自殺未遂を図っています。それなのに、
クラスが合唱コンクールで歌ったのは、『千の風になって』…。どんだけ、皮肉が効いてんだか…」

会場には笑いとともに、「えーっ？」というどよめきも入り混じる。

その後、引きこもりだった頃の実体験を替え歌に託した歌を披露した。

■厳格な父親のもと、不登校にもなれなかった

大谷さんが引きこもったのは、大学を卒業してからのこと。就職活動で、内定を1つも取れなかった。

公務員の父親は、しつけが厳格だった。とくに1人っ子でもある大谷さんに対しては、
大学を出たら就職するという社会の「規定路線」を歩むものだと思い込んでいた。

「まさか我が息子がドロップアウトすることはないと思っていましたから、見事に外れて。
しかも、僕が大学を出た年に父も定年退職を迎えるという、タイミング的にもすべて悪い
方向にはまっちゃったんです。自分が職に就かなかったら、家はどうなるんだ？と、
世界中の不幸を背負ってるような強迫観念にとらわれて…。それが臨界点に達して
引きこもったんです」

引きこもる間も外出することはあったものの、関わりがあったのは、
家族以外にはコンビニの店員くらいしかいなかった。

学校時代も「不登校になりたかった」のに、厳格な両親、とくに父親が許さなかった。
だから、学校にはかなり無理して通い続けていた。

「不登校への憧れが、ずっとあったんです。学校さえ行かなければ、いじめはなかったですから…」

■密室で陰湿ないじめを受けても親に相談できない子どもたち

そして、大谷さんが、地獄の淵から生還して得たものは、もはや「失うものなど何もない」
アーティストとしての凄味だ。

しかし、筆者が何よりも驚いたのは、いまだに（少なくとも大谷さんのいた2000年代
前半の時点でも）教師の加担した陰湿ないじめが行われているという実態だ。　>>2へ続く

http://diamond.jp/articles/-/72634