【英ＦＴ紙】チプラス首相の書簡で露呈したギリシャ財政の危うさ　「EUの支援なしではIMFに返済不可能」、期日寸前の書簡が波紋

★チプラス首相の書簡で露呈したギリシャ財政の危うさ
「EUの支援なしではIMFに返済不可能」、期日寸前の書簡が波紋
2015.5.19（火） Financial Times　（2015年5月18日付英フィナンシャル・タイムズ紙）

ギリシャは先週の国際通貨基金（IMF）に対する7億5000万ユーロの返済であわやデフォルト
（債務不履行）しそうになったため、アレクシス・チプラス首相はIMFのクリスティーヌ・ラガルド
専務理事に対し、欧州連合（EU）の支援がなければ債務返済は不可能だと警告した。

ギリシャ政府は最終的に、EUからの金融支援なしに債務を返済したが、ギリシャがIMFに保有している、
めったに使われることのない緊急準備金を取り崩してやっと支払うことができた。

IMFへの返済のために、IMFに預けている資金を借用するという例外的な取引だ。

チプラス首相はラガルド専務理事に書簡を送り、欧州中央銀行（ECB）が直ちにギリシャに
課している短期国債発行の上限を引き上げなければ、IMFへの返済ができないと通告した。

■ギリシャはどれほど破産に近いのか？

ギリシャの日刊紙カシメリニによって最初に報道されたが、本紙（英フィナンシャル・タイムズ）も
独自に裏付けを取ったこの書簡は、ギリシャ政府がどれほど破産に近いかという疑問を提起している。

ギリシャ政府は来月に期限を迎える計15億ユーロのIMFへの返済に加え、今月末に支払わねばならない
賃金と年金の資金の手当てに四苦八苦している。

次回のIMFへの返済（3億ユーロ）の期限は6月5日だ。

迫り来る債務の返済を実行するためにギリシャ政府が必要としている72億ユーロの支援を巡り、
ギリシャと債権団との間で、4カ月にわたる膠着状態が続いている。ギリシャの経済改革について
合意に達しない限り、債権国・機関は72億ユーロの支援を行うことはない。

チプラス首相の書簡の内容は、5月14日に行われたIMFの非公開理事会でラガルド専務理事が明らかにした。

理事会の討議について説明を受けた関係者らによると、IMF欧州局長のポール・トムセン氏は理事会に対し、
ギリシャの経済改革パッケージに関する交渉があまりに不毛なため、IMFは72億ユーロの支援金のうち
36億ユーロを保留せざるを得ないかもしれないと語ったという。

関係者によれば、トムセン氏は、ギリシャ政府がどの改革を実行する必要があるかについてはIMFは
柔軟な姿勢を保っていると主張しつつ、理事会に対し、改革プログラムは「帳尻が合い」、
ギリシャの債務を持続可能な水準にまで引き下げ始めなければならないと語ったという。

その結果、ギリシャの改革パッケージを骨抜きにしたり、ギリシャの財政黒字の目標を引き下げたりする場合
――ブリュッセルを含め、ユーロ圏諸国の一部政府内で提唱されている立場――、IMFが承認するためには、
EUがギリシャ向け救済融資の損失処理を検討する必要があるかもしれない。トムセン氏は理事会でこう語ったという。

■キプロスの時のような最後通牒も視野

複数の関係者によると、ラガルド専務理事はトムセン氏を全面的に支持し、
IMFは「拙速な」承認手続きを進めるべきではないとスタッフに伝えたという。

「我々が今、IMF自身のルールを根本的に破ることなくIMFが支持できることから、
まだ遠くかけ離れていることは明々白々だ」。IMF理事会の討議について説明を受けたある高官はこう述べた。

理事会の協議について説明を受けた2人の関係者によるに、少なくとも1人の理事が、
ギリシャに対して「受け入れるか拒むか、2つに1つの提案」を行う可能性を口にしたという。

だが、IMFのスタッフは、そのような計画をまとめるには、ギリシャ当局からまだ十分なデータを得ていないと言ったという。

似たような戦術は2013年3月に用いられた。キプロス政府が厳しい救済計画を提示され、
計画に同意しなければ、破綻しかけたキプロス金融部門に対するECBの支援を失うことになると言われた時のことだ。

協議にかかわっているある高官によると、ギリシャ当局に「キプロスのような」提案を行うという案が
一部のユーロ圏財務相の間で勢いを増しているという。　>>2へ続く

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43818

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