【事件】山口５人連続殺害放火から１年　残った住民５人、心に傷[7/21]

イリハム ★＠＼(^o^)／

山口県周南市金峰（みたけ）の郷（ごう）集落で５人が殺害され、２軒が放火された事件から２１日で１年が過ぎた。
集落の住民は事件後、半数以下に減ったものの、心の傷を負いながら、地域の再生に向けた取り組みを続けている。
一方、事件の真相を明らかにする裁判は１１月以降に始まる見通しだ。

７月中旬、金峰地区のあちこちをアジサイが彩っていた。「花は事件を知らんからねぇ」。住民の一人がつぶやいた。
「焼け跡がそのまま。『あそこを通りたくない』という人もいる」。雨が降ると、くすぶったようなにおいが漂う。

郷集落の住民は１２人から５人に減った。犠牲になった河村聡子さん（当時７３）の夫、二次男（ふじお）さん（７７）は今もこの集落で暮らす。
事件当日は参院選の投開票日だった。立会人をする聡子さんに朝、外出する二次男さんが「時間に遅れるなよ」と声をかけたのが、別れになった。
聡子さんは、近所で起きた火災でいったん家を出て住民らと立ち話をした後、自宅に戻り被害に遭った。「警察が一緒に見回りをしてくれていれば」。
被害者参加制度で、事件の裁判の法廷に立つこともできるが、二次男さんは「（被告の）声も聞きたくないし、顔も見たくない」という。

地域を管轄する周南市鹿野総合支所の保健師、山崎マサ子さん（５９）は住民のケアにあたってきた。
事件後、容疑者は逃走し、住民らは避難所に身を寄せた。「事件直後の避難所は、みな黙ったまま。聞かれたことにだけ答える感じだった」。
約１０人に問診したが、不調を訴えた人はほとんどいなかった。

だが９月上旬、家々を回って話を聞くと、「実は、あのときね」と打ち明ける人が続いた。「眠れない」「食欲がない」……。
郷集落や近隣の計３７人のうち、特に気になる状態の住民が８人いた。山崎さんは、「事件直後、取材を受けてテレビに出た人が、
（インターネットなどで）たたかれていた。みんな『何も口にしてはいけない』と思っていたのでは」と察する。

それから同僚と月１度のペースで巡回してきた。専門家を交えたチームは今年３月、「定期的なケアが必要な状態は全員脱した」と判断したが、
山崎さんは「事件を思い出す人はいる。今後も訪問を続けたい」と話す。
地域の再生に向けた取り組みも続く。地元で民宿を営む三浦英隆さん（７７）・美津代さん（７４）夫妻は５月、
近郊の飲食店が茶を使った料理を競作する催しに参加し、宿を訪れた人たちに茶がゆを振る舞った。
「交流人口を増やさないと地区はどうにもならない」。そんな危機感がある。

　一帯はかつては茶の産地。ほぼ全戸に茶の木があり、家で飲む茶を手作りする。３月、地区を離れていた５０代の男性が妻と近くに移り住んできた。
英隆さんらは茶摘みを手伝い、製茶も教えた。「新しいことはできんけど、昔からやっていることなら教えてあげられる」と英隆さん。
行事には必ず参加しているという男性は「昔からそうやって支え合ってきた地域。負担には思わない」と話す。

金峰老人クラブの吉国保男会長（８５）も地域を守ろうと懸命だ。事件前２０人ほどいた会員は１３人に減ったが、
この１年、地区の花壇に花を植えたり、桜の下草刈りをしたりといった恒例行事はやり遂げた。
昨年１１月からは事件があった２１日ごとに地区の懇談会も数回開いた。
「先祖が石を積み田んぼを造った地区。今まで通りの営みを必ず続けていく」と言う。

■初公判期日いまだ決まらず
事件は、山口地裁での裁判員裁判で審理される。
今年３月に始まった裁判官、検察官、弁護士の３者による公判前整理手続きは今月１６日で６回を数えた。
しかし、公判の期日はまだ固まっておらず、初公判は早くても１１月以降になる見通しだ。
鑑定留置を踏まえて、山口地検は刑事責任能力に「問題はない」として被告を起訴したが、
弁護側は「責任能力が大きな争点になるだろう」（山田貴之弁護士）としている。

定期的に面会している弁護側は、被告とのやり取りの詳細を明らかにしておらず、
事件の詳しい動機や放火の方法など不明な点は多いままだ。（寿柳聡、栗林史子）

朝日新聞デジタル　2014年7月21日22時35分　http://digital.asahi.com/articles/ASG7L7R8YG7LTZNB01J.html

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