【政治】集団的自衛権行使、命と暮らしは守れない…私たちの「平和国家」としての誇りが奪われかねない。失うものはあまりに大きい

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　海外での武力行使を可能とする集団的自衛権。この「自衛権」行使でいったい何を守ろうとするのか。そして何を失ってしまう可能性
があるのか。

　閣議決定へ向け性急に行われた与党協議では、この肝心な点についての議論は不十分だった。時間が割かれたのはもっぱら、
具体的行使事例の検証や集団安全保障との関わりなどの「技術的」側面である。

　安倍晋三首相は会見や国会答弁で「国民の命と暮らしを守る」と繰り返した。だが、命と暮らしを守るための絶対条件は平和である。
海外で戦闘行為に参加することが、それと矛盾することは自明だ。

　集団的自衛権の制約があったためイラク戦争の戦闘行為参加は免れたが、参戦した英国などの死者は１００人単位に上った。
にもかかわらずイラク情勢はなお混迷が深まっている。そのような戦いに日本の若者を送り出すわけにはいかない。

　今回の閣議決定では集団的自衛権行使の要件を国民の「権利が根底から覆される明白な危険がある場合」に限定したという。
だが、戦前の日本が旧満州などを国家の存亡に関わる「生命線」と呼び拡張主義に走ったことを考えれば明確な歯止めとは
なりえない。

　暮らしの基盤を支える経済の側面から見ても喫緊の課題は膨れあがる財政赤字への対応、金融政策に頼らない成長戦略などで
あり、他国との軍事同盟強化ではないはずだ。

　日本の経済発展には、成長の可能性を秘める近隣国との安定的関係づくりも欠かせない。「専守防衛」の国是を転換することは、
決してプラスには働かない。

　日本海を挟んだ諸国との経済交流活性化を政策基軸の一つとしている本県にとって、とりわけその影響は見過ごせない。

　また、日米が軍事的一体化をさらに進めれば、結果的に両国にまたがる軍産複合体の形成を促進することにもつながる。
既に武器輸出三原則の見直しなどの動きが顕在化している。

　戦争が、経済停滞の解決策として浮上する危険すらある。そのような経済成長は断固として拒まねばならないものだ。

　日本政府が憲法の精神を踏みにじってまで、性急に戦争のできる「普通の国」になろうとする姿勢は、諸外国の不信も招くだろう。

　なによりも私たち自身の「平和国家」としての誇りまでが奪われかねない。

　失うものはあまりにも大きい。そのような国が子や孫に残したい国なのか。

　守らねばならないのは明日も安心して平和に暮らすことができる社会だ。地域に根ざす市民一人一人の素朴な願いこそが国家の
暴走を止めることができる。

ソース（新潟日報、特任論説編集委員・鈴木聖二氏）
http://www.niigata-nippo.co.jp/news/politics/20140702121305.html