【社会】中国は身柄引き渡しに応じるのか…准看護師遺体発見から１カ月、元同級生の日系ブラジル人の女はどこに行く

★【西成女性遺棄】中国は身柄引き渡しに応じるのか…准看護師遺体発見から１カ月、元同級生はどこに行く
2014.6.21 08:08

大阪市西成区の准看護師、岡田里香さん（２９）の死体遺棄事件は、鍵を握る日系ブラジル人で元同級生の女が
中国で出頭したが、現地当局に身柄拘束されたまま膠着（こうちゃく）状態が続いている。事件は２１日、
遺体発見から１カ月を迎える。この間、大阪府警は元同級生に対し、新たに死体遺棄容疑での逮捕状を取得。
過去に中国から容疑者が引き渡されたのは１件だけで、今回も難航が予想されるため、「重大事件の容疑者
だから身柄の引き渡しを」との強いメッセージで中国側を牽制（けんせい）し、事態の打開を図ろうとしている。

◆事件の重大性
今月上旬、岡田さん宅を府警が現場検証した。事件発覚からすでに一定期間が経過していた上、２度目。狙いは、
死体遺棄容疑での逮捕状取得だった。ある捜査幹部は「中国側に事件の重大性を認識してもらうには、詳細な
証拠を集めて死体遺棄容疑の逮捕状を取る必要があった」と明かす。

元同級生にはすでに、岡田さんになりすまして旅券を不正取得したとする旅券法違反と有印私文書偽造・同行使
容疑の逮捕状が出ていた。

しかし、専門家によると、これらの容疑では中国が身柄の引き渡しを検討する審理すら開かないまま、
不法入国者として元同級生をブラジルに強制送還する可能性があったという。

◆懲役１年の壁
中国の司法制度に詳しい一橋大の王雲海教授（比較刑事法）によると、中国では公安当局や検察が捜査するが、
不法入国者の場合は不起訴となり、容疑者の母国に強制送還されるケースが多い。ただ、今回の事件では、日
本側が引き渡しを求めている上、不法入国より死体遺棄が重罪であるため、「即強制送還」とはならないという。

その場合、捜査とは別に、中国の外交当局が今後同様の事件で相互に引き渡しするかどうか日本側と調整。
合意すれば、最高裁にあたる機関が審理を開く妥当性の有無を精査し、認められれば、地元裁判所が引き渡しを
審理することになるとみられる。

ただ、この審理は、懲役１年以上の罪でなければ開かれないという。中国の旅券法違反に相当する罪の刑罰は
懲役１年に満たないといい、王教授は「引き渡しのためにはより重い罪での逮捕状や証拠が必要だった。
これで交渉材料が整った」と話す。

◆過去に１件のみ
だが、警察庁によると、過去に中国が日本に容疑者の身柄を引き渡したのは、平成１１年に横浜市で現金などを
奪ったとして神奈川県警が強盗容疑で指名手配していた男について、２１年に応じた１件しかない。

今回、元同級生の身柄がブラジルに強制送還されれば、真相解明の道はさらに遠のく。
ブラジルは憲法で他国に自国民を引き渡すことを禁じているからだ。

この場合、日本側が捜査資料をブラジルに渡し、同国の国内法に基づいて司法手続きを要請する「代理処罰」を
求めることになるが、どこまで捜査が尽くされるかは不透明だ。

近畿大の辻本典央教授（刑事訴訟法）は「日本とブラジルでは裁判のルールは異なり、代理処罰になれば、
府警が集めた証拠が採用されるかも不透明だ。ブラジルへの強制送還を防ぐには、日本の外交当局が粘り強い
交渉を続けることが重要だ」と話した。

http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/140621/waf14062108080007-n1.htm