【当局摘発密着番組】「人種や国籍を理由とする差別、偏見を助長しかねない」　識者ら構造を問題視　「捜査側と一体化」

樽悶 ★

テレビ朝日「全国犯罪捜査網スーパーＧメン」で捜索の場面で使われた「撮影：麻薬取締部」の画面表示
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「不法就労外国人の巣窟をガサ入れ！」とテロップをつけたテレビ東京の「密着ガサ入れ！」
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外国人の摘発に対して「不法残留」「不法就労」と判を押したような表示をするフジテレビの「タイキョの瞬間！」
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■「密着」番組に批判

　税務、入国管理局、麻薬取締部など捜査権のある当局の摘発現場に密着した番組がこの秋、民放３局で放送された。各局で２０年以上続く「警察２４時」と同様、現場の迫力を伝える一方で「摘発する当局の視点から描くことで、必然的に当局と一体化している」と番組の構造を批判する意見が識者から出ている。当局が撮影した摘発映像を番組の中で長時間使った局もあり、客観的な取材と言えるのか疑問視する声も上がっている。【青島顕】

■「当局撮影映像を使いすぎ」

　マンションの室内にびっしりと置かれた大麻草の鉢植え。まさに大麻を生産する工場のようだ。におい消しのためなのか空気清浄機が置かれている－－。

　テレビ朝日が９月２０日に放送した２時間４８分枠の番組「全国犯罪捜査網２０１８秋　スーパーＧメン」の一場面だ。麻薬取締部の職員が、栽培していたとみられる男性２人の居る部屋に踏み込み、営利目的で大麻を所持していた疑いで２人を逮捕した。驚くような現場映像が続くのだが、部屋に入ったところから画面右上に「撮影：麻薬取締部」と小さなテロップが出る。

　番組ではほかに、県の税務課職員が税金の長期滞納者の家に踏み込む場面、空港の税関で密輸されそうになった金の延べ棒の発見・押収、ベトナム人窃盗団への張り込みと摘発、国際的な薬物密輸グループの摘発、とめまぐるしく展開していく。

　テレビ東京が１０月１０日に放送した３時間５分枠の番組「密着ガサ入れ！」も税金の長期滞納者、超過滞在のタイ人ホステスが勤めるスナックへの潜入、やはり超過滞在の外国人を働かせるクリーニング工場、危険ドラッグの製造現場の摘発が次々に映し出される。

　いずれも当局への「密着」を看板とし、当局の視点から描き出されている。番組ホームページには、テレビ朝日は「怪しい人物に目を光らせ、犯罪を水際で防ぐ！　私たちの生活を守る捜査官たち……通称『Ｇメン』に密着取材を敢行」、テレビ東京も「悪事の数だけ『ガサ』がある」とある。

　放送評論家の鈴木嘉一さんは、一連の番組を「当局密着番組」と呼ぶ。隠し撮りも含め、摘発担当者の視点からの撮影に終始し、取り調べや家宅捜索を受けた側にはほとんど取材していないことを問題視する。「一から十まで当局の協力で番組が成り立っており、必然的に一体化しているように見える。だから、公権力は『善』、摘発される側は『悪』という構図になる。しかし、不法残留・就労の外国人を例にとれば、不法行為に至った理由や背景、社会の仕組みにまで踏み込んで伝えるのもメディアの役割ではないか」と指摘する。

　鈴木さんはさらに、テレビ朝日の番組では税金滞納者への取り立てや「麻薬Ｇメン」による違法薬物の家宅捜索がそうだったように、当局から提供された映像がかなり多いことを懸念している。テレビ東京の番組にも、当局から提供された映像があった。「長さにもよるが、提供映像を番組の柱の一つとする手法は、『密着』を通り越して当局への全面的な依存であり、“融合”と言われても仕方がない」と批判する。

　テレビ朝日広報部は「番組の制作過程の詳細については従来答えていない」、テレビ東京の広報部も「番組制作の過程については従前より答えを控えている」と文書で回答した。

■不法行為の背景に触れてこそ

　超過滞在や不法就労の外国人を摘発する入国管理局職員に密着したフジテレビの番組「タイキョの瞬間！密着２４時」に対しても、弁護士グループから「差別、偏見を助長しかねない」と批判が出ている。局は視聴者から賛否合わせ約３００件の意見が寄せられたことを明らかにした。

　番組は１０月６日放送の２時間枠の番組。河川敷の不法占拠を取り締まる係官や密輸を取り締まる税関職員の活動とともに、東京入国管理局の入国警備官に同行取材した密着映像を放映した。

（続きはソース）

毎日新聞 2018年11月26日
https://mainichi.jp/articles/20181126/ddm/004/040/046000c?inb=ra

【当局摘発密着番組】「人種や国籍を理由とする差別、偏見を助長しかねない」 識者ら構造を問題視 「捜査側と一体化」

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