【科学】染井吉野の起源に迫る　父オオシマザクラにヤマザクラの遺伝子入っていた

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染井吉野の起源に迫る　父オオシマザクラにヤマザクラの遺伝子入っていた（北海道新聞） - Yahoo!ニュース
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全国の染井吉野はDNAパターンが同一

　桜前線の北海道到達までもうすぐ。道内に自生するのは、エゾヤマザクラ（オオヤマザクラ）とチシマザクラなどだが、道央以南に植えられた染井吉野（そめいよしの）も日本を代表する桜として親しまれている。その染井吉野を巡り、最近、新発見があった。研究の中心になった森林総合研究所（森林総研）多摩森林科学園（東京都八王子市）の勝木俊雄・サクラ保全担当チーム長に新発見と桜にまつわるエピソードを聞いた。

　染井吉野（漢字表記の理由は後述）は幕末に江戸・染井村の植木屋から「吉野桜」の名で売り出され、奈良の吉野桜（ヤマザクラ）と区別するため、明治時代に染井吉野と命名された。花付きの良さと成長の早さが好まれ、瞬く間に全国に広まった。今では寒い道東、道北と暑い沖縄以外でその姿を見ることができる。苗木は接ぎ木で育てられるため、どれも同じ形態で、葉が伸びるより前に花が咲くので姿が美しいこと、ほぼ一斉に咲いて一斉に散るので潔い感じがするのが特徴だ。

　では、起源はどこにあるのか。明治以降、さまざまな説が浮かんでは消えた。1960年代に国立遺伝学研究所の竹中要（よう）博士が交配などの遺伝学的な実験を繰り返した結果、エドヒガンとオオシマザクラの2種を掛け合わせると、染井吉野とよく似た個体が育つことを突き止めた。

　このように異なる種同士が交配してできたものを植物分類学では「種間雑種」と呼び、学名と「ソメイヨシノ」という標準和名が与えられている。「染井吉野はその中の一つのクローンを育てたもの。これを栽培品種と呼び、種間雑種名と区別するため、名前を漢字表記しています」

　染井吉野のもとになった2種のどちらが父でどちらが母かは不明だったが、86年に葉緑体のDNA分析から、エドヒガンが母であることが判明した。またDNAのSSR（塩基の単純反復配列）という部分に着目する研究が進められ、全国の染井吉野のSSRが完全に一致。同一クローンであることがあらためて確かめられた。

ヤマザクラの可能性11％　関東南部の山から？

　勝木さんら森林総研グループは、さらに染井吉野の謎に迫った。野生種のサクラのSSRを分析して、それぞれに固有の遺伝子のパターンを割り出し、染井吉野のSSRのパターンがどの野生種の可能性があるのかを比較した。この結果、エドヒガンと47％、オオシマザクラと37％、ヤマザクラ11％となった。

　「染井吉野には、エドヒガンとオオシマザクラだけでなく、ヤマザクラの遺伝子も入っていました。母親がエドヒガン、父親がヤマザクラの血が少し混ざったオオシマザクラと考えられます。ヤマザクラが混ざったオオシマザクラは関東南部の里山に生育するほか、観賞用のサトザクラとして栽培されていたので、エドヒガンと雑種を作る可能性は、十分あったと考えられます」

　科学の進歩がまた1枚、染井吉野のベールを脱がせた。（編集委員　橘井潤）

【科学】染井吉野の起源に迫る 父オオシマザクラにヤマザクラの遺伝子入っていた

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