【経済】東芝、第三者委員会の報告書　追及少ない監査法人、財務基盤確保したい思惑も［07/29］

★東芝、第三者委員会の報告書　追及少ない監査法人、財務基盤確保したい思惑も
2015.07.29

東芝の不適切会計問題については、各紙でさまざまな報道がされているし、インターネットでも記事は多い。

筆者がこうした記事を読むときには、本当に独立して書いているかをポイントにしている。

大手紙の記事では、誰が書いているか、誰にインタビューしてるか、それらの人と東芝や
その監査法人である新日本監査法人との距離感がどうなっているのかに注意する。

ネットの記事も同じである。ネットで書いている人や、ネタ元としてインタビューされている
人には、大学教授やコンサルタントなどもいるが、どこかの上場企業の社外取締役である人の
場合には、注意が必要だ。１０００万円程度の報酬を会社からもらっているはずで、
東芝や新日本監査法人との距離感が近い人も少なくないが、そういう場合、両者の悪い
ところも良いところも書きにくい。

逆に、距離感が遠いと、よほど勉強家の独立系ジャーナリストでもない限り、情報がなく
記事が書けない。ちなみに、筆者は大学教授であるが、上場企業の社外取締役はやっていない。

東芝問題では、一応、第三者委員会（委員長、上田広一・元東京高検検事長）による報告書が
７月２１日に公表されている。２００９年３月期から１５年３月期の第３四半期末まで、
１５６２億円の利益が水増しされた実態はつぶさに書かれている。いわば組織ぐるみを
印象付けている。これを受け、田中久雄氏ら歴代３社長が引責辞任を表明した。

マスコミでは、社長３代の辞任とその利益操作に注目し、彼らの内部抗争が利益操作の
遠因であるかのような報道が多い。

しかし、筆者が注目しているのは、調査期間を区切り、調査期間２カ月で報告書が出てきた
ことだ。筆者は役人時代に金融検査官の経験があるが、もし白紙からのスタートで２カ月間で
調査するというのなら、大量の人員を投入しないと無理だ。第三者委員会の４人のほか、
補助者が１００人近くいるが、２カ月間、他の業務は一切なしでも、東芝全体を見られるか
どうかという程度だ。

また、社長３代が引責辞任というが、奇妙なのは新日本監査法人があらためて監査を行う
こととなっていることだ。報告書には監査法人へ言及個所があまりないというのもかなり
不思議だ。うがった見方をすれば、社長辞任させても３代どまりで、それ以外には波及
させない一方で、監査法人は代えられなかったともいえる。

東芝はダメージコントロールに徹しているが、これから刑事訴訟、行政処分、民事訴訟が
ありうる。例えば、有価証券報告書虚偽記載で金融商品取引法違反、利益操作・背任で
商法違反、金融庁による課徴金納付命令、株価下落の損害賠償、役員の任務懈怠（けたい）
に対する株主代表訴訟などである。

こうしたリスクに備えるためにも今後、のれん代償却や繰延税金資産の見直しが予想される
中で、少なくとも、東芝の財務基盤だけはなんとか確保したいところだ。こうした思惑で、
東芝に騙されたはずの新日本監査法人に再び監査を依頼するという構図が読み取れる。　
（元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一）

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20150729/dms1507290830003-n1.htm

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