【ブルームバーグ】朝日新聞に試練、慰安婦・原発記事撤回で－政権批判の影響力低下か

★朝日新聞に試練、慰安婦・原発記事撤回で－政権批判の影響力低下か

９月17日（ブルームバーグ）：朝日新聞が慰安婦問題と東京電力福島第一原子力発電所事故に
関する一部記事の撤回に追い込まれた。これまで集団的自衛権の行使容認や原発の再稼働など
安倍晋三政権が進める政策に反対する論陣を張ってきた同紙は試練に立たされている。

「世界に向かってしっかりと取り消していくことが求められているのではないか」－。
安倍首相は14日出演したＮＨＫの日曜討論で、朝日新聞は朝鮮民族の女性を強制的に
連行して慰安婦にしたとする記事の撤回を国際的に周知する必要があるとの認識を示した。
　　　　
朝日新聞は８月５日付朝刊で、慰安婦に関する報道の検証記事を掲載。1980年代から90年代に
取り上げた済州島で女性を強制連行したとする吉田清治氏の証言は虚偽だと判断、記事を取り消した。
木村伊量社長は９月11日に記者会見し、東電福島第一原発事故発生直後の2011年３月15日、
所員約650人が当時の吉田昌郎所長（故人）の命令に反して撤退したとする記事も誤りだった
として取り消し、謝罪した。

奥村準明治大学国際総合研究所客員研究員は、安倍政権の保守的な側面が今後さらに強まり、
政策を推し進めようとするようになるだろうが、今回の誤報問題でそれを押しとどめようとす
る朝日の力は弱くなるかもしれない、と指摘する。　

■行き過ぎたキャンペーン
朝日新聞は９月14日付紙面では、2012年６月８日付の経済面で報じた任天堂の岩田聡社長の
発言記事に関する謝罪文を掲載。任天堂のホームページ上の動画での岩田氏の発言内容を
まとめたものだったが、出典を明記せず、同社から「インタビューは受けていない」と
抗議を受けたという。

このほか、慰安婦問題に関する記事の訂正について「遅きに失したのでは」と論評した
ジャーナリストの池上彰氏のコラムの掲載を一時、見送ったことも読者から批判を受けた。
９月４日付の紙面で掲載したが、これについても同６日に謝罪記事を掲載した。

朝日新聞の星浩特別編集委員は14日付の同紙で一連の不祥事について「猛省しなければならない」
と表明。その上で、同社内の雰囲気について「時折、事実の発掘・報道とは別に、行き過ぎた
キャンペーンを展開しようという動きが出てくることだ。そうした点が、今回の問題などに
通じることなのかどうかも検証すべき課題だろう」と問題提起している。

朝日新聞社の広報部は16日、ブルームバーグ・ニュースに対し、書面で「これまで同様に、
ジャーナリズムの責務を果たしていきたい」とコメントした。

http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NC0W8J6TTDS301.html