【社会】第三者の精子を使う不妊治療「AID」、「出自を知る権利」求める子供たち…「親子とも幸せ」へ法整備を

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ソース（MSN産経ニュース）　http://sankei.jp.msn.com/life/news/140904/trd14090411300006-n1.htm
写真＝無精子症と診断された夫婦の自助グループ「すまいる親の会」が子供に告知するツールとして作った書籍と紙芝居
http://sankei.jp.msn.com/images/news/140904/trd14090411300006-p1.jpg

■「親子とも幸せ」へ法整備を

　代理出産をはじめ、第三者が妊娠や出産にかかわる「特定生殖補助医療」。法案が検討されるなかで議論が活発化している。
第三者の精子を使う不妊治療「ＡＩＤ」は法整備がないまま、半世紀以上も実施されてきた。生まれた子供たちが成長し、「当事者」
として「出自を知る権利」を求めている。（佐藤好美）

　今年５月末、東京都内で書籍「ＡＩＤで生まれるということ」（萬書房）の出版を記念する会合が開かれた。「ＡＩＤ」は６０年以上前から
実施され、今も年に１００人以上が、この技術で生まれるとされる。会合は「当事者とは誰なのか」を掲げ、成長して事実を知った
「子供たち」が体験を報告。法案作成に際しては、当事者の意見を聞いてほしいと訴えた。

　石塚幸子さん（３５）は約１０年前にＡＩＤで生まれたことを知った。父親の遺伝性疾患に不安を感じたのがきっかけだった。「今まで
信じてきたものが崩れ落ち、何が本当で何が嘘か分からなくなった」と言う。しかも、精子を提供した「ドナー」をたどることはできず、
アイデンティティーを立て直すこともできない。「モノと母親からできている感覚が消えない。一度でいいからドナーに会って、そこに
人がいたことを実感したい」

　ＡＩＤで出産した親は、それを子供に隠して暮らしていることが多い。医療機関もそう勧めてきた。だが、子供たちは知らされなかった
ことにも傷つく。石塚さんはＡＩＤ自体に反対だ。「親が後ろめたいと思っていることが、私の出自なのか。法律を作ったら、後ろめたく
思わずに『私、ＡＩＤで子供を産んだのよ』といえるのか。そういう社会を作って維持していく覚悟はあるのか、考えてほしい」

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　生殖補助医療は、親の意向で進んできた。ＡＩＤに否定的な子供側の訴えは、親の要望と対立しているかにみえる。だが、親の側にも
「今のままでは困難だ」との思いがある。鈴木恵子さん＝仮名＝は結婚して６年目に、夫の希望でＡＩＤの治療を開始。女の子を出産した。

　治療した病院では、子供に出生の経緯を言わないように念を押された。だが、子供は成長すれば、「この目は誰に似たのかな」
「指は誰に似たのかな」と言い始める。夫は似ていないことを気にしてか、運動会などの行事から足が遠のいていった。父子の関係も
夫婦の関係もよそよそしくなっていくのに、傷口に触れるようで話ができない。

　鈴木さん自身、治療をしたことに罪悪感があった。「秘密を重しのように抱いて、引きずりながら子育てをしてきた」。１人になると涙が
止まらず、不眠と摂食障害に苦しんだ。心療内科ですべてを打ち明けたが、反応は批判的だった。「そんな治療までして。自分でまいた
種でしょ、って感じでした」

　このままではダメだと思い、自助グループに参加して海外の事情を勉強。ＡＩＤで生まれた子供たちにも会い、出生の経緯を
知らされなかった不信と、ドナーが分からない苦痛を知った。

　子供に真実を伝えようと思ったが、夫は反対した。だが、離婚も話し合う中で夫は徐々に資料を読み始め、子犬を飼い始めると、
娘と一緒に散歩に出るようになった。関係修復を、娘は「待ってました」というように受け入れた。

　娘が１３歳のときに事実を話した。思春期は避けるべきだとされるが、娘は拍子抜けするほど淡々と受け止めた。だが、娘が将来、
ドナーを知りたいと思っても、知るすべはない。

　鈴木さんは言う。「法案には出自を知る権利は盛り込まれておらず、ＡＩＤの親子がうまくやっていく環境は作られていない。だが、
生殖補助医療は進んでいく。治療を継続する環境を整えることしか考えていないように見える。子供を産むのは、治療のためではなく、
家族で幸せになろうと思ってのこと。生まれてくる子供と、不妊治療を望む大人の、その先を考えて法律を作ってほしい」

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（>>2以降に続く）