【政治】降板もやむなし　もはや茫然自失の菅首相…なぜ彼には「チーム菅」と呼べる仲間がいないのか　「菅一存」の弊害　補選の２戦２敗・１不戦敗後、どうなるか

擬古牛φ ★

★もはや茫然自失の菅首相…なぜ彼には「チーム菅」と呼べる仲間がいないのか　「菅一存」の弊害

　歳川隆雄

●降板もやむなし

菅義偉首相は、野球に例えれば無死満塁で満を持して登板したリリーフエースのはずだった――。
確かに、マウンドに立った菅投手はいきなり「携帯電話料金の引き下げ」と「不妊治療の保険適用」という
豪速球で2者連続三振に討ち取り、残るはあと1人までいった。

ところが、与党議員4人の「夜の銀座」問題や森喜朗東京五輪組織委員会会長（元首相）の
「女性蔑視発言」といった自軍野手のエラーがあった上に、「長男の接待」疑惑で自らが乱調を来し
四球乱発に加えて、思わぬ長打を浴びて茫然自失の状態である。
ここは「コロナ退治」という魔球でも繰り出さなければ、
観客のブーイング（内閣支持率の急落）が止まらず降板もやむなしの大ピンチだ。

なぜ、菅投手は突然の乱調を来したのか。
捕手の出す投球サインに従わない、ピッチング・コーチがマウンドに駆け寄っての助言も断る投手なのだ。
配球の組み立てだけでなく試合運びまで全てを仕切る。まるでプレイング監督である。

政治に話を向けると、筆者が繰り返し指摘してきたことだが、政権発足当初の首相事務秘書官人事が間違っていた。
菅氏が官房長官時代の事務秘書官を「気心が知れているから」と、そのまま首相秘書官に格上げ・起用したのだ。

●「抜擢」と厳しい現実

霞が関の主要省庁である外務、経済産業、財務、防衛省と警察庁から起用する5人の首相事務秘書官は
局長級というのが長きに渡っての慣習である。現在の菅官邸では厚生労働省出身が加わった6人体制である。
もちろん、それには理由がある。各秘書官は自分の出身省庁と政策調整を行う。
基本的にカウンターパートは各々の官房長である。個別政策上の調整であれば、当該局長と行う。

ところが菅首相秘書官は高羽陽（外務省）、門松貴（経産省）、大沢元一（財務省）、
増田和夫（防衛省）、鹿沼均（厚労省）、遠藤剛（警察庁）である。
増田氏は安倍晋三首相事務秘書官から横スベリしたので入省（庁）年次が他の秘書官より上（88年旧防衛庁）だ。
高羽、大沢両氏は95年入省、門松氏は94年入省であり、出戻りの鹿沼氏は90年旧厚生省入省である。
そして遠藤氏も95年入庁であり、内閣情報調査室内閣参事官から19年3月に菅官房長官秘書官に抜擢された。

何が言いたいのかと問われると思う。
菅氏が絶大な信を置くスピーチライターである高羽氏、内政を担当する大沢氏、事務全般と毎朝の散歩を
一緒する門松氏は本省では課長級であり、たとえ首相の意向であるとしても本省の官房長や局長に対して
「指示」し難いという現実があるのだ。

換言すれば、官邸と各省庁との調整機能がワークしていないということだ。加えて、菅氏自身の政治手法もある。
即ち、会食相手の人選だけでなく、アポイントメントも自らが取る菅氏は全てを自分で決めている。
スピード感が求められる決定の場合は奏功するが、それが今やマイナスに働いているのだ。

政権発足3カ月余を経た1月1日付で首相周りを統括する首相政務秘書官に91年旧大蔵省入省同期のピカ一とされる
寺岡光博内閣官房内閣審議官（元財務省主計局主計官）を起用した。
遅まきながらも菅氏自らが首相秘書官人事の誤りを認めたことになる。

●「チーム菅」の不在

安倍晋三前首相には、毀誉褒貶があったものの今井尚哉首相補佐官兼首相政務秘書官（82年旧通産省）を
中心とする「チーム安倍」が存在したが、現在の官邸には「チ－ム菅」と呼べる進言・諌言グループがいない。

ロシアの通信社スプートニクが、「スガーリン：スターリンを連想させる独善的な歩み」というタイトルで
ロシア極東研究所のワレリー・キスタノフ日本研究センター長のインタビュー記事を掲載している。

平たく言えば、前首相は「安倍1強」だったが、現首相は「菅一存」である。
加えて、菅政権の正念場である現下の衆参院予算委員会での首相答弁からも分かるように、
発信力が無きに等しい「菅語」がコロナ対応の迷走と相まって下向きベクトルへと作用している。

今すぐの「菅降ろし」は起こり得ないが、4月25日の衆院北海道2区、参院長野選挙区と同広島選挙区の
補欠選挙で自民党の2戦2敗・1不戦敗が露わとなった後、果たしてどうなるのか――それまでは様子見である。

講談社 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/79983

【政治】 降板もやむなし もはや茫然自失の菅首相…なぜ彼には「チーム菅」と呼べる仲間がいないのか 「菅一存」の弊害 補選の２戦２敗・１不戦敗後、どうなるか

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