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純粋・応用数学(含むガロア理論)6
- 594 :132人目の素数さん:2021/03/26(金) 11:26:54.29 ID:5vJFMCQ+.net
- >>593
つづき
集合論が背負わされることになった三番目の宿命は,— これは 20 世紀に入ってからのことになるのだが — 集合論のパラドックス (antinomies) の発見とツェルメロらによる集合論の公理化による,パラドックスの回避,という 19 世紀から20 世紀初等にかけての数学の展開から,「素朴集合論は間違っていた」という間違った風評が広まってしまったことであろう.実際には,カントルが集合論で得た結果には,このパラドックスと抵触するものは含まれておらず,カントル自身,ほとんど [Zermelo 1908] と同じとも言える精度での,パラドックスの回避についての理解を得ていたことが,デデキントやヒルベルトにあてた彼の書簡から見てとれる.
20 世紀に入ってからの “旧来の数学” は,カントルの集合論の大きな柱の一つである超限帰納法を (否定はしないが) 回避する,という方向で発展した.選択公理と超限帰納法の組合せで自然に証明できる命題の˙い˙く˙つ˙かが,ツォルンの補題
を (ある場合にはかなりアクロバット的に) 用いることで,明示的に超限帰納法に言及することなく証明できる,という状況がこの方向性を更に後押ししたと思われる.この結果,旧来の数学では超限帰納法に対してほとんどタブーと言ってよい扱いがされるようになり,このことと,「素朴集合論は間違っていた」という間違った風評から,超限帰納法が (少なくともフォン・ノイマンによる 1920 年代の研究以降) きちんと基礎付けのされた論法であることを知らない (更に,そのようなものでない疑わしい論法だとうすうす勘違いしている) 数学者すら少なくないのではないかと思う.実際,数理論理学や集合論を専門としない「プロ」の数学者が「超限帰納法」,「選択公理」などを含む「集合論」について言及したときに˙驚˙く˙べ˙き˙議˙論が展開されることがある,ということを,我々は身近な例として一つならず知っている (例えば,[渕野 2018] では,そのような例の一つをとって,その「驚くべき」と形容すべき点の所以と,そのような驚くべき理解 (誤解) がど
のような過程を経て成立したものであり得るかについて議論している).
つづく
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