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【原発】原発情報3944【放射能】

800 :地震雷火事名無し(北海道):2016/09/25(日) 21:03:34.41 ID:Yr5tVuHl.net
 ■神ではなく虚構
 簡易裁判が3月に始まった。
「裸体の女性が両足を開き、その間に十字架上のイエス・キリストが…」。
検察は起訴状で、舞台にかかるポスターの図柄について違法性を追求した。
 劇場側は「演出はキリスト失踪という伝説を取り入れた。歌手が演じるのは神ではなく虚構の中の幻である。
虚構の創造は芸術本来の仕事。憲法も表現の自由を保障している」と主張した。
教会は「キリストは人の心に実在する。信者の気持ちが傷ついたことは厳然たる事実」と論じた。
 神か幻かー。
双方の主張には接点がなかった。
女性裁判官は困惑した表情を浮かべていたが「犯罪性は認められない」との判決を下した。
 劇場の支持者たちは、5万人の署名を集めた。
メズドリッチは再演を決めた。
一方で、活動的な信者が劇場の前で集会を開き「ロシアの敵」に抗議。
教会の背後から国家の影が忍び寄っていた。
 メズドリッチはロシアのメジンスキー文化相から突然呼び出しを受け、現代版タンホイザーをめぐる公聴会で証言を求められた。
「参加者は正教会の支持者ばかり。私が何を言っても無駄だった」
 メズドリッチは公聴会の後にメジンスキーの執務室に招かれた。
「三つの条件をのんでほしい」。
メジンスキーが切り出した。
「まずキリストの自堕落を描いた第1幕を根本的に変えるべきだ。第二に神を女性の裸体と絡めたポスターを撤去してほしい。第三に劇場の公式な謝罪を求める」
 「ポスターの変更だけは応じましょう」。
メズドリッチは答えた。
 ■解任 上演中止に
 公聴会翌日の再演はまたも満席となった。
観客は白紙のポスターに、検閲の傷痕を認めた。
「劇場を爆破する」と電話がかかった。
幕あいに警察が爆弾を捜したが、嫌がらせと判明した。
 国立劇場を管轄する文化省はメズドリッチを解任した。
新任の支配人はタンホイザーの上演を中止した。
ロシアのメディアが「スキャンダラス・オペラ」と書きたてた作品は、演劇評論家による投票で、14年音楽演劇部門で最優秀の評価を受けた。
メズドリッチはタンホイザーの「復活」を宣言した。
だが二度と上演の機会が訪れないことは分かっていた。
 16年4月、モスクワのボリショイ劇場でクリャービンが演出するドニゼッティの喜劇オペラ「ドン・パスクワーレ」が上演された。
昔の話を現代の寓話に置き換えた。
70歳の大学学長が若い女性との恋に苦しむ筋書きだ。
思い切りのよい演出と人間の業を見つめる視線は揺るがない。
 客席にはモスクワに居を移したメズドリッチの姿があった。
首都で若い演劇人を育てるためにノボシビルスクを去った。
「2,3年のうちに後継者を決めて劇場支配人を辞めるつもりだった。タンホイザーは劇場人生の最後を狂わせた。
住み慣れた地を離れてみると、あの出来事がまるでひとごとのようだ。騒ぎに巻き込まれたのは、別の自分のように思えてね」
 悲しみは物語に変えることで乗り越えてきた。
劇場はそのためにあるのかもしれない。

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